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5 シベリア抑留体験
玉城裕美子

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 はじめに

 シベリアとは、ユーラシア大陸北部のウラル山脈から太平洋岸に至る広大な地域を指す。シベリアの大半はタイガ地帯である。タイガというのは、植物帯の名称で、エゾマツ、トドマツ、トウヒ、ツガなどの針葉樹からなる森林地帯である。大地は凍土層で覆われており、平均気温はマイナス三〇度から四〇度と低く乾燥しており、夏は短い。シベリアの開発(鉱産資源、水力資源、林産資源等)は、ウラル山脈東麓のチェリヤビンスクから日本海に面したウラジオストック間を結ぶ、ハバロフスク経由のシベリア鉄道が完成(一九一六年)したことと、ロシア革命によるソビエト政権樹立(一九一七年)により、飛躍的に進められることになった。国内の流刑囚や反革命派であった白系ロシア人などが、シベリアに送られその労務に服していた。
 このような極寒の地に、少なくとも二六人の読谷山村民が二年から四年に及ぶ期間抑留され、シベリア開発の労働を強制された。体験者は一様に「よく生きて帰れた」と当時を振り返る。本稿では、体験談、座談会をもとにシベリア抑留への経緯と、体験の特徴を見てゆく。

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