読谷村しまくとぅば「むんがたい」

ハジチ由来 はじちゆらい

話者 具志堅タケ(1914・T3) 地域 儀間 時間 01:28
  • しまくとぅば
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 ハジチぬ由来(ゆらい)や、(むかし)よー唐旅(とうたび)しみしぇーんち。


 (むかし)ぬあぬー、唐旅(とうたび)しみしぇーんりしぇーなー、じこーぬ名誉(めいよ)、なー(えら)役人(やくにん)やみしぇーてーるばーてー。


 あんし、うぬ(ちゅ)唐旅(とうたび)かいめんしぇーに、(ふに)んかい、あぬー白鳥(しるどぅや)(とぅ)まてぃさぐとぅ、「(ふに)艫綱(とぅむぢな)白鳥(しるどぅや)()ちょーん」でぃちさぐとぅ。「白鳥(しるどぅや)やあらん ウナイ(がみ)どぅ」んち、(けー)しみそーちゃんでぃ。


 あんさぐとぅ、今度(くんど)ぉうぬ(ちゅ)唐旅(とうたび)ぇしみそーち(かえ)りに、あぬー難船(なんせん)()たやーに、(かじ)()()たやーに、うぬ(ふね)ぇいっけーらさってぃ。さぐとぅ、今度(くんどー)なーうぬ(ちゅ)(たー)や、なー()ぬさやーり(うむ)とーぬばーに。うぬ(ゆめ)うつつそーぬとぅくるんかい、(ゐなぐ)んかいかんしひち()くさってぃうぬ(ふに)ぇ、くぶりとーぬ(ふに)るやしが()くさりやーに、うぬ(ふに)んかい()みそーちゃんり。


 さぐとぅ、うぬ()くさったぬうれー(ゐなぐ)なやーに、ちょうどぅハジチ()ち、うぬ(てぃー)やむるハジチ()ちょーみしぇーたんでぃ。さぐとぅ、くれーうぬ(ちゅ)ぉうぬ(たし)きらったぬ恩義(うんじ)とぅさーに、あぬー唐旅(とうたび)から(けー)てぃめんそーち(やー)んかい(ちゃ)ぐとぅ、すぐ(とぅじ)(ちゃー)ウナイん(ちゃー)んかい、むるハジチ()ち。うりからハジチりし(はじ)またんでぃぬくとぅやしが。


 あんすとぅ、うぬ(うた)やたんてーまん、(むの)ぉあぬー(いー)よーなむんち。あぬ白鳥(しるどぅやー)でぃしぇー(やく)やてーしが、「(ふに)艫綱(とぅむぢな)白鳥(しるどぅや)()ちょーん」りちさぐとぅ、「白鳥(しるどぅや)やあらん ウナイ(がみ)どぅ」んち、うぬ言葉(くとぅば)(けー)ちゃしさーなかい(たし)かたんでぃぬ(はなしー)やしが。


 くりから沖縄(うちなー)ぬハジチぇ(はじ)またんりるくとぅ。

 ハジチの始まりの話だよ。


 昔は、唐旅(とうたび)をするということは、たいそう名誉なことで、偉い役人しか行けなかった。


 ある時、役人が唐旅へ行く船上で、船の(とも)(船尾)に白い鳥が止まった。それを見た誰かが、「船の艫綱(ともづな)に白い鳥が止まっているよ」と歌ったので、「白い鳥ではない、ウナイ神だよ」と、その役人が歌を返したようだ。


 その後、唐での仕事を終えての帰り、役人の乗った船は暴風に遭いひっくり返されてしまった。海中に放り出された役人たちは、これまでの命かと意識を失いかけていると、女の人に引き上げられたそうだ。転覆した船も起こしてくれ、引き上げられた役人たちは再び船上に戻ることができた。


 その時、船を起こしてくれた女の人の手には、ハジチがいっぱい突いてあったんだって。それで、その役人は助けてくれたことに感謝し、唐旅から戻って家に着くと、すぐに妻や姉妹たちにハジチを突かせたわけさ。それからハジチというのが始まったということだよ。



 また、その歌からも分かるように、言葉は使いようでね。縁起が悪いといわれている白い鳥を見て、「船の艫綱に白い鳥が止まっているよ」と、誰かが歌った。それを聞いて、「白い鳥ではない、ウナイ神だよ」と、その言葉を返したことで助かったという話だよ。


 それから、沖縄のハジチは始まったということさ。

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