読谷村しまくとぅば「むんがたい」

アカマタ婿入 あかまたむこいり

話者 新城平永(1921・T10) 地域 宇座 時間 03:19
  • しまくとぅば
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 三月(さんがち)三日(さんにちー)浜下(はまう)りぬ(はなしー)てー。くれー、あぬー(ぅんかし)、かーま(ぅんかし)て、一人(ちゅい)ぬなー(ちゅ)(ゐなぐ)(をぅ)てーるぐとぅ。あんさ、其処(をぅま)(とぅない)んかい、またお(ばあ)がめんしぇーてーるばーてーや。


 あんし、毎晩(まいばん)なー、うぬ(ゐなぐ)(やー)んかい(ゐきが)ぬよ、(ちゅ)らーが(しぬ)(ちぇー)しーしーしよっ。なー、二人(たい)ぐーりーや友達(どぅし)ぐゎーけーなてぃねーらん。あんさぐとぅ、うぬ(とぅない)ぬお(ばあ)さのー、「今日(ちゅー)()(をぅ)がやー」でぃち、ちゃーこそこそ(ばなしー)ぐゎーや()かりんなたぐとぅよ、「ちゃぬふーじー(ゐきが)やがやー」んでぃち。


 あんさーい、(やー)からー(とぅ)()じやーい、「ちゃぬふーじー(ゐきが)やがやー」んち、節穴(ふしふぎ)ぬみーぐゎーから()じゅんでぃさぐとぅよ。あんされー、アカマターがるゴー()ちよ、うぬ(ゐなぐ)とぅ相向(あいむ)かいし(はなしー)すんりんれーや。あんさぐとぅ、うぬお(ばあ)なー(たまし)()ぎてぃて、「トーヒャー!なー大事(でーじ)なとーん」、あんさー(やー)かい、なーすぐそーまりーし自分(どぅー)(やー)んかいへーりんちよ。


 翌日(なーちゃー)よ、くれーなーうりんかい()()かさんでー大事(でーじ)するむんでぃち。あんさーい、翌日(なーちゃ)ぁまためんそーやーい、「ぃやー、あれー本当(ふんとー)人間(にんじん)やんでぃる(うむ)とーるい」でぃちさぐとぅ、なーうぬ(ゐなぐ)ぉ、「()が、本当(ふんとー)人間(にんじん)でぃち、(ぬー)んかい()ちめんしぇーが」んち、なーまたうぬ(ゐなぐ)ぉうぬ(ゐきが)んかいまん()りしるうぐとぅ。あんさぐとぅ、「あれー化物(ばきむん)るやんどー、(わん)ねーくぬ(みー)()ちょーぐとぅや、ぃやー(だま)さってぃるうぐとぅ、(わー)(いー)()ちとぅらさんなー」んち、お(ばあ)が。


 あんさーあぬ(をぅー)よ、(ぅんかし)(をぅー)()みんしぇーたしぇーや、ヲゥーバーラんかい。「あぬ(をぅー)よ、(はーい)んかい()ちて、あんさーうぬ(ゐきが)ぬ、またなーちかん(ちゅー)(はじ)やぐとぅ、うりが着物(ちん)(すす)んかい、よーんぐゎー(はーい)かんし、(をぅー)()ちから、(はーい)(とぅー)ちょーきよー。(はん)りらんぐとぅし(とぅー)ちょーきよー」んち、あんし(ならー)しみそーちゃんでぃ。「まじ、(わん)(いー)(とぅー)()ちょーけー、(あと)()かいぐとぅ」んち。



 さぐとぅ、うぬ(ゐきが)ぁなー、うぬ(ゆーる)ぉまた(ちゃー)い、(はなしー)(ぬー)んくい()わやーま、また(けー)てぃ()ちぇーるばーて。あんさぐとぅよ、「昨晩(ゆーび)(ちょー)てぃー」でぃち、お(ばあ)さのー()みそーちゃぐとぅ、「あー昨晩(ゆーび)(ちょー)びーたん」「あんしぇー、ぃやー(わん)()ちゃるぐとぅしー」でぃちさぐとぅ、「あんしぇーびん」「とーあんしぇー、うりが(ぅん)ぢぇーん(とぅくる)(うー)てぃ()かりーぐとぅ」んち。


 なー、(はーい)()かってぃるうぐとぅ着物(ちん)(すす)んかい。あんすぐとぅ、うぬ(をぅー)(うー)てぃ(ぅん)ぢゃぐとぅよ、(いし)(みー)んかいよ、うぬ(をぅー)()っちょーたんでぃ。あんさぐとぅ、「とーなーなー、ぬしかてぃ(んー)ちんでぃ、(なま)ねーなー正体(しょうたい)(あら)わりーさ」んちよ、あんしうぬ(ゐなぐ)んかい()ちゃれー、うぬアカマターぬ尻尾(じゅーぶ)(はら)んかいよ、(はーい)()かっとーたんねあたるばーて。あんさぐとぅ、()ちゃれーちゃへーぬアカマターぬ夫婦(みーとぅんだー)其処(ぅんま)んかいまた、ゴー()()ちょーたんでぃ。


 あんさぐとぅ、なーうぬ(ゐなぐ)ぉなー(たまし)()ぎてぃて、「ちゃーさらーましやいびーがやー。(わん)ねーなー()じかさーあいびーしが、貴方(うんじゅ)一人(ちゅい)んかい()やびーしが、(わね)ぇうりが(くゎ)()っちょーびーさー」んでぃ()ちぇーるふーじ。「懐妊(かさぎ)とーびんどー」んりち()ちゃぐとぅよー、「とーあんしぇーなー、くりんなー(わー)(いー)し、ぃやーや()かんねーじゃーふぇーすんどー」でぃちよ。あんさーい、「(はーま)んかい()りてぃ(しな)()らみてぃ、あんさーい、(なみ)()かてぃや(しな)三回(みけーん)()やーい、あんさーい潮水(すー)んかい(ひさ)()らちゃーい、あんし、ぃやーや(やー)かい(けー)てぃ(くー)よー」んでぃちさぐとぅよ。


 あんしされーや、(はーま)(しな)()らみてぃ三回(みけーん)彼処(あま)んかい()たれーよ、アカマター七匹(ななち)()るちぇーたんりぬ(はなしー)やるばー。あんさーい、(ゐなぐ)三月(さんぐゎち)三日(みっかー)(はーま)(しな)()らみりでぃしぇー、うりから(ぅん)じとーんでぃ。

 三月三日の浜下りの話だよ。昔、ずっと昔ね、ひとりの美しい娘がいた。そして、隣にはお婆さんが住んでいたらしい。



 そして、美しいその娘の家に毎晩のように美青年が通いつめ二人は親密になった。いつもひそひそと話し声が聞こえるので、隣のお婆さんは「今夜も来ているな、どんな男かな」と、気になっていた。




 そこで、娘の家の節穴から「どんな男なのかな」と覗いたところ、とぐろを巻いたアカマターが、娘と向かい合って話をしていた。「これはもう!大変」と、お婆さんはびっくりして脇目もふらず家へ逃げ込んだ。





 お婆さんは見たことを娘に話さないと大変なことになると思い、翌日、娘のところへ行った。「お前は、あの男が本当の人間だと思っているの?」と聞くと、娘は男に夢中になっているからね、「何を言っているのですか。あの人が本当の人間ではないというのですか」と返した。それで、お婆さんは、「あれは化物だよ、私はこの目で見たんだよ、あなたは騙されているんだよ、私が言うのを聞いておくれ」と言った。



 昔は芭蕉糸を紡いだものをヲゥーバーラ(竹籠)に入れていたでしょう。そこで、お婆さんは、「ヲゥーバーラに入っている芭蕉糸を針に通しておきなさい。男は今晩も来るはずだから、悟られないようにそっと男の着物の裾に刺しなさい。針が取れないように刺しなさい」と教えて、「とりあえず、私の言うことを聞いておけば、後で分かるでしょう」と言った。


 そしたら、男はその夜もやって来て、娘と語り合って帰って行ったそうだ。それで、お婆さんが「昨夜も来たね?」と聞いたら、「ええ、夕べも来ました」と。「それで私が言った通りにやった?」とお婆さんが聞くと、「お婆さんが教えた通りにしましたよ」と答えたので、「それなら、その男の後を辿って行けるでしょう」と言った。


 男は着物の裾に芭蕉糸を通したまま出て行ったのでね。その糸を追って行くと、石垣の中へ続いていたんだって。そうしたら、「さあ、石垣の中をのぞいてごらん、男の正体がわかるよ」と、お婆さんが娘に言った。娘が覗いて見ると、そこには大きなアカマターの夫婦がとぐろを巻いて座っていて、アカマターの尾のあたりには針が刺さっていたそうだ。



 それを見た娘はとても驚き、「どうしたらいいのですか。私は恥ずかしいことに、貴方だけに話しますが、その人の子どもを身ごもっています」と言ったようだ。「妊娠しています」と言ったら、「そういうことなら、私の言うことを聞かなければ厄介なことになるよ」と言い、「浜に降りて砂を踏みなさい。そして波に向かって砂を三回蹴って、その潮水で足を濡らして家に帰って来なさい」と教えた。





 お婆さんが教えた通りに、浜の砂を踏んで三回蹴ったら、アカマターの子が七匹堕りたそうだ。それで、娘たちは三月三日には浜の砂を踏みなさいということだよ。

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