三月三日ぬ浜下りぬ話てー。くれー、あぬー昔、かーま昔て、一人ぬなー美ら女ぬ居てーるぐとぅ。あんさ、其処ぬ隣んかい、またお婆がめんしぇーてーるばーてーや。
あんし、毎晩なー、うぬ女ぬ家んかい男ぬよ、美らーが忍り来しーしーしよっ。なー、二人ぐーりーや友達ぐゎーけーなてぃねーらん。あんさぐとぅ、うぬ隣ぬお婆さのー、「今日ん来る居がやー」でぃち、ちゃーこそこそ話ぐゎーや聞かりんなたぐとぅよ、「ちゃぬふーじー男やがやー」んでぃち。
あんさーい、家からー飛出じやーい、「ちゃぬふーじー男やがやー」んち、節穴ぬみーぐゎーから見じゅんでぃさぐとぅよ。あんされー、アカマターがるゴー巻ちよ、うぬ女とぅ相向かいし話すんりんれーや。あんさぐとぅ、うぬお婆なー魂抜ぎてぃて、「トーヒャー!なー大事なとーん」、あんさー家かい、なーすぐそーまりーし自分ぬ家んかいへーりんちよ。
翌日よ、くれーなーうりんかい言ち聞かさんでー大事するむんでぃち。あんさーい、翌日ぁまためんそーやーい、「ぃやー、あれー本当ぬ人間やんでぃる思とーるい」でぃちさぐとぅ、なーうぬ女ぉ、「何が、本当ぬ人間でぃち、何んかい言ちめんしぇーが」んち、なーまたうぬ女ぉうぬ男んかいまん惚りしるうぐとぅ。あんさぐとぅ、「あれー化物るやんどー、私ねーくぬ目し見ちょーぐとぅや、ぃやー騙さってぃるうぐとぅ、私が言し聞ちとぅらさんなー」んち、お婆が。
あんさーあぬ苧よ、昔ぇ苧積みんしぇーたしぇーや、ヲゥーバーラんかい。「あぬ苧よ、針んかい貫ちて、あんさーうぬ男ぬ、またなーちかん来る筈やぐとぅ、うりが着物ぬ裾んかい、よーんぐゎー針かんし、苧や貫ちから、針通ちょーきよー。外りらんぐとぅし通ちょーきよー」んち、あんし習しみそーちゃんでぃ。「まじ、私が言ぬ通い聞ちょーけー、後ぉ分かいぐとぅ」んち。
さぐとぅ、うぬ男ぁなー、うぬ夜ぉまた来い、話ん何んくい終わやーま、また帰てぃ行ちぇーるばーて。あんさぐとぅよ、「昨晩ん来てぃー」でぃち、お婆さのー言みそーちゃぐとぅ、「あー昨晩ん来びーたん」「あんしぇー、ぃやー私が言ちゃるぐとぅしー」でぃちさぐとぅ、「あんしぇーびん」「とーあんしぇー、うりが行ぢぇーん所ぉ追てぃ行かりーぐとぅ」んち。
なー、針貫かってぃるうぐとぅ着物ぬ裾んかい。あんすぐとぅ、うぬ苧追てぃ行ぢゃぐとぅよ、石ん中んかいよ、うぬ苧や入っちょーたんでぃ。あんさぐとぅ、「とーなーなー、ぬしかてぃ見ちんでぃ、今ねーなー正体や現わりーさ」んちよ、あんしうぬ女んかい言ちゃれー、うぬアカマターぬ尻尾ぬ方んかいよ、針や貫かっとーたんねあたるばーて。あんさぐとぅ、見ちゃれーちゃへーぬアカマターぬ夫婦が其処んかいまた、ゴー巻ち座ちょーたんでぃ。
あんさぐとぅ、なーうぬ女ぉなー魂抜ぎてぃて、「ちゃーさらーましやいびーがやー。私ねーなー恥じかさーあいびーしが、貴方一人んかい言やびーしが、私ぇうりが子持っちょーびーさー」んでぃ言ちぇーるふーじ。「懐妊とーびんどー」んりち言ちゃぐとぅよー、「とーあんしぇーなー、くりんなー私が言し、ぃやーや聞かんねーじゃーふぇーすんどー」でぃちよ。あんさーい、「浜んかい下りてぃ砂踏らみてぃ、あんさーい、波向かてぃや砂ぁ三回蹴やーい、あんさーい潮水んかい足濡らちゃーい、あんし、ぃやーや家かい帰てぃ来よー」んでぃちさぐとぅよ。
あんしされーや、浜ぬ砂踏らみてぃ三回彼処んかい蹴たれーよ、アカマター七匹堕るちぇーたんりぬ話やるばー。あんさーい、女ぉ三月三日や浜ぬ砂踏らみりでぃしぇー、うりから出じとーんでぃ。
三月三日の浜下りの話だよ。昔、ずっと昔ね、ひとりの美しい娘がいた。そして、隣にはお婆さんが住んでいたらしい。
そして、美しいその娘の家に毎晩のように美青年が通いつめ二人は親密になった。いつもひそひそと話し声が聞こえるので、隣のお婆さんは「今夜も来ているな、どんな男かな」と、気になっていた。
そこで、娘の家の節穴から「どんな男なのかな」と覗いたところ、とぐろを巻いたアカマターが、娘と向かい合って話をしていた。「これはもう!大変」と、お婆さんはびっくりして脇目もふらず家へ逃げ込んだ。
お婆さんは見たことを娘に話さないと大変なことになると思い、翌日、娘のところへ行った。「お前は、あの男が本当の人間だと思っているの?」と聞くと、娘は男に夢中になっているからね、「何を言っているのですか。あの人が本当の人間ではないというのですか」と返した。それで、お婆さんは、「あれは化物だよ、私はこの目で見たんだよ、あなたは騙されているんだよ、私が言うのを聞いておくれ」と言った。
昔は芭蕉糸を紡いだものをヲゥーバーラ(竹籠)に入れていたでしょう。そこで、お婆さんは、「ヲゥーバーラに入っている芭蕉糸を針に通しておきなさい。男は今晩も来るはずだから、悟られないようにそっと男の着物の裾に刺しなさい。針が取れないように刺しなさい」と教えて、「とりあえず、私の言うことを聞いておけば、後で分かるでしょう」と言った。
そしたら、男はその夜もやって来て、娘と語り合って帰って行ったそうだ。それで、お婆さんが「昨夜も来たね?」と聞いたら、「ええ、夕べも来ました」と。「それで私が言った通りにやった?」とお婆さんが聞くと、「お婆さんが教えた通りにしましたよ」と答えたので、「それなら、その男の後を辿って行けるでしょう」と言った。
男は着物の裾に芭蕉糸を通したまま出て行ったのでね。その糸を追って行くと、石垣の中へ続いていたんだって。そうしたら、「さあ、石垣の中をのぞいてごらん、男の正体がわかるよ」と、お婆さんが娘に言った。娘が覗いて見ると、そこには大きなアカマターの夫婦がとぐろを巻いて座っていて、アカマターの尾のあたりには針が刺さっていたそうだ。
それを見た娘はとても驚き、「どうしたらいいのですか。私は恥ずかしいことに、貴方だけに話しますが、その人の子どもを身ごもっています」と言ったようだ。「妊娠しています」と言ったら、「そういうことなら、私の言うことを聞かなければ厄介なことになるよ」と言い、「浜に降りて砂を踏みなさい。そして波に向かって砂を三回蹴って、その潮水で足を濡らして家に帰って来なさい」と教えた。
お婆さんが教えた通りに、浜の砂を踏んで三回蹴ったら、アカマターの子が七匹堕りたそうだ。それで、娘たちは三月三日には浜の砂を踏みなさいということだよ。