読谷村しまくとぅば「むんがたい」

鬼餅由来 おにもちゆらい

話者 島袋利蔵(1893・M26) 地域 古堅 時間 01:49
  • しまくとぅば
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 あれー、ある島尻(しまじり)方面(ほうめん)いぇりん南方(なんぽう)やてーるばーてーや。あんやしが、なー(ぅんかし)前代(めーでぃ)(くとぅ)やくとぅ。あぬらーヲゥナイウィキー(をぅ)とーしがなー、ヲゥナイや(びち)んかい(をぅとぅ)()っち他島(たしま)んかい()ぢょーんてーや。うぬウィキーぐゎーや、なー(おに)なてぃよー。(はじ)めー(はか)からすんち(ぅん)じゃち、(ちゅ)るあさてぃ(くゎ)いたしが、(あとー)なー、うりん(をぅ)らんなてぃ、(くゎー)らんないれーから、自分(どぅー)(ゐなぐ)(うや)までぃん(くゎ)てぃよ。あんし、そー(うに)なとーたんでぃよ。


 あんし、(むら)(ちゅ)近所(ちんじゅ)ぬ「くれーかんかんやしがやー、くれヲゥナイ(そー)てぃ()解決(かいけつ)しみれーならん」ち、ヲゥナイが連絡(れんらく)さーにやー、あんさーにさくとぅなー、「あんあんやん」ち、し、さくとぅ。


 あんさーにうぬヲゥナイや(かんげー)てぃやー、(やー)んじ、またムーチーりし仕度(しこー)てぃやー、あんさ、うり()っち()ぢ、「とー、今日(ちゅー)(わん)がムーチーだてーん仕度(しこー)てぃ(ちぇー)くとぅ()まさやー」んち、自分(どぅー)ぬウィキーぬ(やー)んかい(ぅん)ぢやー。あんさーに(はんた)此処(くま)()(ばんた)ぁ、(はんた)(めー)なちよ、「とー、其処(ぅんま)んかい()れー、(わん)がムーチー()ますくとぅ」んちムーチー()まち。あんさーに、()むるうりとー(すき)(んー)じゃーに(はんた)んかい()()とぅちゃぐとぅ、うぬ(うに)其処(ぅんま)んじ()じ、なーなとーんでぃるふーじーやさ。


 あんさーに、うりから次第(しでー)次第(しでー)此処(くま)んかい()てぃ(ちゃー)にやー。(わっ)たんでん(くー)さいねー、(やー)(あま)()いんでーんかいウナームーチーんちよー、ムーチー()れーるうぬカーサ(ちゅく)やーに其処(ぅんま)んかい、(うに)(くゎ)んが(ちゅー)ぐとぅ、(あま)()いんかい(しちゃー)んかい()ぎてぃ。うぬふーじーし(なま)ちきてぃ伝説(でんせつ)()るばーよー。


 あれはね、沖縄の南部あたりの話だったわけさ。もう昔、だいぶ前のことだからね。そこにヲゥナイウィキーの兄妹がいたそうだが、妹は別の村へ嫁いでいたようだね。その兄はもう鬼になってしまって、墓から死体を引きずり出して喰っていたようだ。しまいには、自分の母親までも喰うようになって、まさしく鬼になっていたんだって。


 それで、村の人たちが「これは妹に知らせてなんとか解決させなければならない」と、妹にそのことを話したわけさ。



 それを聞いた妹は、ムーチー(餅)をこしらえて、鬼になっているという兄の所へ行った。「さあ、今日は私がムーチーをたくさん作ってきたから御馳走しようね」と崖の方へと誘った。「さあ、そこに座って、ムーチーをあげるから」と、切り立った崖を背にしてムーチーを食べさせた。そして、餅を食べている隙を見計らい、崖から突き落とし退治したということだよ。



 そんな話が次第にこちらの方にも伝わってきてね。私らが子どものとき、餅を包んでいたカーサ(月桃の葉)二枚を十字に結んで、鬼が来ないように家の軒下に吊るした。それをウナームーチーといったよ。そういう伝説が今でもあるわけだ。

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