あれー、ある島尻方面いぇりん南方やてーるばーてーや。あんやしが、なー昔、前代ぬ事やくとぅ。あぬらーヲゥナイウィキー居とーしがなー、ヲゥナイや別んかい夫持っち他島んかい行ぢょーんてーや。うぬウィキーぐゎーや、なー鬼なてぃよー。初めー墓からすんち出じゃち、人るあさてぃ喰いたしが、後なー、うりん居らんなてぃ、喰らんないれーから、自分ぬ女ぬ親までぃん喰てぃよ。あんし、そー鬼なとーたんでぃよ。
あんし、村ぬ一近所ぬ「くれーかんかんやしがやー、くれヲゥナイ添てぃ来ぃ解決しみれーならん」ち、ヲゥナイが連絡さーにやー、あんさーにさくとぅなー、「あんあんやん」ち、し、さくとぅ。
あんさーにうぬヲゥナイや考てぃやー、家んじ、またムーチーりし仕度てぃやー、あんさ、うり持っち行ぢ、「とー、今日や私がムーチーだてーん仕度てぃ来くとぅ食まさやー」んち、自分ぬウィキーぬ家んかい行ぢやー。あんさーに崖、此処ぁ切り崖ぁ、崖前なちよ、「とー、其処んかい座れー、私がムーチー食ますくとぅ」んちムーチー食まち。あんさーに、食むるうりとー隙見じゃーに崖んかい押し落とぅちゃぐとぅ、うぬ鬼ぇ其処んじ死じ、なーなとーんでぃるふーじーやさ。
あんさーに、うりから次第次第に此処んかい寄てぃ来にやー。私たんでん小さいねー、家ぬ雨垂いんでーんかいウナームーチーんちよー、ムーチー食れーるうぬカーサ作やーに其処んかい、鬼ぬ喰んが来ぐとぅ、雨垂いんかい下んかい下ぎてぃ。うぬふーじーし今ちきてぃ伝説ぉ有るばーよー。
あれはね、沖縄の南部あたりの話だったわけさ。もう昔、だいぶ前のことだからね。そこにヲゥナイウィキーの兄妹がいたそうだが、妹は別の村へ嫁いでいたようだね。その兄はもう鬼になってしまって、墓から死体を引きずり出して喰っていたようだ。しまいには、自分の母親までも喰うようになって、まさしく鬼になっていたんだって。
それで、村の人たちが「これは妹に知らせてなんとか解決させなければならない」と、妹にそのことを話したわけさ。
それを聞いた妹は、ムーチー(餅)をこしらえて、鬼になっているという兄の所へ行った。「さあ、今日は私がムーチーをたくさん作ってきたから御馳走しようね」と崖の方へと誘った。「さあ、そこに座って、ムーチーをあげるから」と、切り立った崖を背にしてムーチーを食べさせた。そして、餅を食べている隙を見計らい、崖から突き落とし退治したということだよ。
そんな話が次第にこちらの方にも伝わってきてね。私らが子どものとき、餅を包んでいたカーサ(月桃の葉)二枚を十字に結んで、鬼が来ないように家の軒下に吊るした。それをウナームーチーといったよ。そういう伝説が今でもあるわけだ。