読谷村しまくとぅば「むんがたい」

タクかマジムンか たくかまじむんか

話者 松田ミヨ(1901・M34) 地域 喜名 時間 01:59
  • しまくとぅば
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 うぬ(ゐきが)ぬ、ガチやてーるばーてー、(たく)(とぅ)ってぃ(ちゃー)にかい、(にー)道具(どうぐ)(ねー)んばーてー、(なーび)ぇ。(ねー)んなたくとぅ、(とぅない)んじ羽釜(はがま)()てぃ(ちぇー)るふーじ。


 羽釜(はがま)()てぃ()(にっ)ちゃくとぅ、(とぅない)(いふ)知恵(じんぶん)()ちやてーるばーてー、(とぅない)(ちゅ)ん。(なま)ねー、(たく)ぉむげーいる時分(じぶの)ぉ、(うぃー)んかい(てぃー)やうっ(けー)てぃ、()ぎくないんでぃ。あんとぅ、「(なま)ねーなー、あれー(たじ)とーる時分(じぶん)やくとぅ、羽釜(はがま)(とぅ)ってぃ(くー)わるやっさー」んち。




 あんさーかい、「いぇー、(わっ)たー(なま)羽釜(はがま)使(ちか)いくとぅ、羽釜(はがま)(とぅ)らさんなー」んちゃくとぅ。()しらんよーい、そーまりーいっけーらちぇーるしじやしが、羽釜(はがま)んかい()っぱてぃ、(しる)()てぃたる、(みー)()てぃらんしぇーやー。



 あんさーにかい、うぬ(ちゅ)()ちから、「(たく)かマジムンか、(たく)かマジムンか」んち、ひっちー()びーたんでぃ。(ゐきが)ぬガチなてぃ、自分(どぅー)一人(ちゅい)()(くゎ)いんでぃさくとぅ、「(たく)かマジムンか」んでぃやぎんどー、ひっちー。あんさーにかい、「(たく)(あら)てぃ()ったん。()(めー)ちゃん。(たじ)たん。(たく)かマジムンか、(たく)かマジムンか」んちぇーしーしーすたんでぃ。


 あんさくとぅ、(あと)(とぅない)可笑(うか)はぬにじららんしぇーやー。(あと)()っち(ちゃー)にかい、「いぇー、(ゐきが)ぬやーガチングェーしねー、ぃやーや『(たく)かマジムンか』んでぃしがやー、『(たく)かマジムンかー』あらん、むげーとーる万事(ばんじ)に、羽釜(はがま)んかいうぬ(たく)()っぱてぃ()てぃらんぐとぅ。ぃやーわちゃくすんでぃる(とぅ)ってぃ(ちゃ)る、うりっ、ぃやー(たく)ぉ」ん、(とぅ)らちゃくとぅやー。



 「(わん)ねー、うれーそー(たく)やたがやー、マジムンるやたがやーんでぃ(うむ)たるむのー、本物(そーむん)やびてーさやー。あんしる(わね)ぇ、「(たく)かマジムンか、(たく)かマジムンかんでぃ()やびたんでー」んちよー。


 あんし、(はなし)狂言(ちゅーぎん)かいや、ちゃー「(たく)かマジムンか」んでぃ()しぇー、ちょいちょい。あんしる、あん()ちぇーるふーじどーやー。

 その男は、食いしん坊だったんでしょうね。(たこ)を取って来たものの、煮るための鍋がない。それで、隣から羽釜を借りて来たそうだ。


 食いしん坊は借りて来た羽釜で蛸を煮ていたが、隣の人もちょっと知恵があったんでしょうね。蛸は熱湯の中では反り返るのを知っていたので、「そろそろ蛸が煮立っている頃合いだから、羽釜を返してもらおう」と隣に行った。


 「おい、私はこれから羽釜を使うので返してくれないか」と、隣から言われた食いしん坊は、慌てて見られないように中身を移した。ところが、蛸は羽釜の蓋にくっついたままで、手元に汁だけが残り、それに気づかず羽釜を返した。


 隣の男が帰った後、食いしん坊は自分一人だけで食べようとしたら蛸が無い!「あれは蛸だったのか、マジムン(化物)だったのか」と叫んだそうだ。「蛸を洗って羽釜に入れた。火を燃やした。煮立った。煮立ったのは蛸か、マジムンだったのか」と繰り返し叫んでいたそうだ。



 それを隣で聞いていた隣の男は可笑しさをこらえきれずに吹きだした。それで、隣の男は食いしん坊のところにやってきて、「なあ、お前は男のくせに盗み食いをするなんて。『蛸だったのか、マジムンだったのか』とお前は言うけれど、そんなことはない。煮立ったら蛸は羽釜の蓋にくっつき落ちないものだよ。お前をからかうつもりで、羽釜を取りに来たんだよ。ほれ、お前の蛸はここだよ」とあげたそうだ。


 食いしん坊の男は「蛸は本物だったのか、マジムンだったのかと思い、それで蛸かマジムンかと叫んだんですよ」と言った。


 そういう内容の、「蛸かマジムンか」という喜劇がよく演じられていたよ。

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