読谷村しまくとぅば「むんがたい」

大力平田子 だいりきひらたしー

話者 伊波カマ(1889・M22) 地域 伊良皆 時間 01:13
  • しまくとぅば
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 平田子(ひらたしー)でぃる(ちゅ)ぉ、()(たげー)しんしぇーたんでぃしが、此処(くま)んかいもーち。あんさくとぅ(てぃち)ぇなー、「平田子(ひらたしー)でぃしぇー何処(まー)(をぅ)が」んちゃくとぅ、「あねっ、此処(くま)なかい(をぅ)ん」でぃ、(うし)なか(たー)()かすたんでぃしが。(たー)()かすたんでぃしが、「此処(くま)なかい(をぅ)んでー」でぃなー、平田子(ひらたし)()みそーちゃくとぅ。


 あんさくとぅ、「(ぅん)じてぃ()ぅ」んちゃくとぅ、「いー、(ぅん)じてぃ(ちゅー)んで」んち。ちゃっぴぬ(うし)やたんでぃしが、すぐ(たー)真中(まんなか)とーてぃ(うし)()()てぃやーに、(あぶし)んかいぷってぃかちゃくとぅ。


 あんさーに、(てぃち)ぇよー、「はーくれー、容易(よー)ならんぐてー()っちょーさやー」んち、また(とぅ)(ぅん)じやーに。


 (たー)土手(あむとぅ)んかいすぐなーちゃぴぬマーイサーやさ。うれーなー、(わっ)たー(わか)さいねー(やま)から()ぃ、(たむの)ぉうりんかいかきてぃ()るちゃいかみたいすたさ。イーヌカーぬ其処(ぅんま)なかい()さ、(いし)(なま)ん。




 うりんなー、しぐ自分(どぅー)一人(ちゅい)さーに(とぅ)やーにぶってぃかちゃくとぅやっ。「アキサミヨー!平田子(ひらたしー)でぃ()みしぇーる(ちゅ)ぉ、ちゃーる大武士(でーぶし)がやみしぇーらー()からん。うっぴぬ(うし)(とぅ)ってぃぶってぃかすい。またうっぴぬマーイサーん(とぅ)ってぃぶってぃかすいや。はーなー、くぬ(ちゅ)(うじ)たむんやっさー」んち、(てぃち)(むる)いんそーちゃんでぃる(はなしー)()ちゃんでー。

 平田子という人は、ここ伊良皆に住むようになってからは畑仕事をしていたそうだ。ある時、牛に(すき)を引かせて田を耕していたら、敵がやって来て、「平田子というのはどこにいるか」と言ったので、「おお、ここだよ。ここにいる」と、平田子は返事をしたわけだ。


 そしたら、「出てこい」と言われたので、「ああ、今、行くよ」と。使っている牛はとても大きな牛だったそうだが、平田子は田の真ん中で、その牛を捕まえて引っ張って、ドスンと(あぜ)に放り上げた。


 それで、「こいつは、ただならぬ力の持ち主だ」と思っている敵の前に、平田子は田から飛び出してきた。


 田の土手にはとても大きな黒石があるけどね。その石は、私たちが若い頃、山での薪取りからの帰り、その石を利用して薪を頭上に載せたり下ろしたりしていたんだがね。その石はまだイーヌカー(上ヌ井泉)の所にあるよ、今も。


 その石を平田子が、一人で取って放り投げたものだから、「なんとまあ!平田子という方はどれほど力の強い武士なのか分からない。こんな大きな牛を掴まえて放り投げるし、またこんなに大きな石も取って放り投げるんだから。ああもう、恐ろしい人だ」と、敵は戻って行かれたという話を聞いたんだよ。

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