昔よ、アカナー主とぅウナー主んにぬ人がめんしぇーたんでぃ。アカナー主んでぃぬ人ぉ、大変良い人やみしぇーてぃ、情深い人やみしぇーたんでぃしが。ウナー主んでぃしぇー、悪な者なやーに童ん達ん何んうちゅ喰いてーぬふーじや。
しさぐとぅ、今度ぉアカナー主や、「なー、くり生ちきとーちーねー、此処ぬ人ん達や、童ん達んむる残さんむん。ちゃーがらし、くれー殺さんねーならんさー」んでぃやーに計らいし。
さぐとぅ、今度ぉアカナー主が船造やーに、一ちぇー木さーに歪がーひーがーさーに悪な造いし。今度ぉ、なー一ちぇー土さーに立派ぐゎーすぐ造てぃさぐとぅ。ウナー主ぬ家んかい行ぢゃーに、「ウナーよー、りっか二人魚喰しーが行か。魚喰しー勝負しっ来ぅ」んちさぐとぅ。「あんすみ、あんしぇー行ちゅさ」んでぃやーにしぇーぎさん。
あんとぅ、浜んかい添てぃ行ぢゃーに、「ぃやーや船ぇじる選ぶが」んちゃぐとぅ、うぬ立派造らっとーぬ、土し造らっとーぬ船取ってぃさぐとぅ。りか、あんしぇーんち、沖んかい漕じ行ぢさぐとぅ。
アカナー主やなー魚ぉどんどん喰すしが、くぬウナー主ぬ釣竿んかいてぃーちんかからんなてぃさぐとぅ。「いぇーアカナー、ぃやー魚ぉゆー釣りーしが、何が私にんかい、何んち魚ぉむる喰らんがやー」んちさぐとぅ。「いぇーうりんかいや知恵るやんどー、コツぬる有んどー。ぃやーや船ぬ艫んかい小便しっくゎーさーに、足さーにポンポン叩けーわ。あんしーねーじこー魚ぉ喰さりーさ」んちさぐとぅ。「えー、あんやみ」んでぃやーに、小便ひっちゃきやーにトントン叩ちゃぐとぅ、うれー土しる造てーぐとぅ、うぬ船ぇ割りやーに海んかいポトンさぐとぅ。「くぬひゃーや、私騙しくゎたんやー」んち、うり泳じさぐとぅ、泳じなー、くりうちゅ喰らなやーんでぃそーぬ場に。
さぐとぅなー、アカナー主や魂抜ぎやーに、天んかい向かてぃ、トートーメー、あぬお月様てー、「トートーメーさいトートーメー、愛さみしぇーらー鉄オーダー降るち呉みそーり。憎さみしぇーらー破りオーダー降るち呉みそーり」んち、天んかい手ぃうさーちさぐとぅ。
鉄オーダーぬ降りやーに、うぬアカナー主や鉄オーダーんかい乗いんでぃすぬとぅくる、アカナーや其処んかい泳じ掴みらりやーに。片足ぇ噛んくーらってぃ、片足切らーなてぃ、うぬアカナー主や。やしが、うぬ天んかいそろそろと昇てぃめんそーちゃんでぃ。
あんさぐとぅ、またウナー主んうり真似さーに、「トートーメーさいトートーメー、愛さみしぇーらー鉄オーダー降るち呉みそーり。憎さみしぇーらー破りオーダー降るち呉みそーり」んちさぐとぅ。破りオーダーぬ降りてぃ来ぐとぅ、うりんかい乗てぃさぐとぅ。ウナー主や天ぬ半ばまでぃ行ぢさぐとぅ、うぬ破りオーダーやけっ切りやーに、海ぬ真ん中かいポトンみかち落てぃてぃさぐとぅ。「アカナーよー」、ボロンボロンボロンさーに、うぬなー泳じ、溺れ死にさんでぃぬくとぅやしが。
また、一方ぬアカナー主や、天んかいめんそーやーに、あぬお月様んかい、トートーメーぬ中んかい入っち。昔ぇ、あぬお月様んかいトートーメーでぃたんよーや、トートーメーさい。うりが中んかい入っち、東ぬ海から西ぬ海んかい、ちゃー潮汲みーが、片足さーにめんしぇーたんでぃ。
私ねー童ぐゎーそーいねー、月ぬ夜ねー、「あー、ありんかいアカナー主がめんしぇーさーやー」でぃ、思とーたんどー。
昔ね、アカナー主とウナー主という人がいらしたそうだ。アカナー主という人は、とても人柄もよく情深い人だったそうだが。ウナー主というのは、悪い人で、子どもでも構わずに喰っていたようだね。
そこで、アカナー主は、「もう、こいつを生かしておくと、そこの人たちや子どもも残らず喰われてしまう。どうにかしてこいつを退治しなければいけない」とある計らいをした。
そうして、アカナー主は二艘の船を造った。一艘は木で不格好に造り、もう一艘は立派な土船を造った。ウナー主の家に行き、「ウナーよ、二人で魚釣りに行こう。釣り勝負をしよう」と誘うと、「そうか、それなら行こう」と行ったようだ。
それで、海へ連れて行き、「お前は、どの船がいいか」と聞いたら、(ウナー主は)立派な土船を選んだ。そうして、二人は沖へと船を漕いで行った。
アカナー主は魚が次々と釣れたが、ウナー主の釣竿にはちっとも魚がかからない。それで、「おいアカナー、お前はそんなに魚が釣れるのに、どうして私には、全然釣れないのか」と聞いた。すると、「ああ、それはコツがあるよ、知恵をはたらかせるんだよ。船尾に小便をひっかけて、足でポンポン叩くといいよ。そうすれば魚はよく釣れるよ」と言った。(ウナー主が)「ああそうなのか」と、小便をひっかけて船尾をトントン叩くと、土船は割れて海へ落ちてしまった。「この野郎、私を騙しやがったなあ」と、(アカナー主)を喰ってやろうと必死に泳いだ。
そしたら、アカナー主はびっくりして天を仰ぎ、お月様に向かって、「トートーメーさい(お月様)トートーメー、私を愛しく思うなら鉄のモッコを降ろして下さい。憎いとお思いなら破れたモッコを降ろして下さい」と手を合わせた。
すると、鉄のモッコが降りて来て、アカナー主がそれに乗ろうとするところに、ウナー主が泳ぎ着き掴まえられてしまった。そうして片足を噛み切られて、アカナー主は片足になってしまったが、そのままするすると天へ昇って行かれたそうだ。
そうしたら、またウナー主もそれを真似て、「トートーメーさいトートーメー、愛しく思うなら鉄のモッコを降ろして下さい。憎いとお思いなら破れたモッコを降ろして下さい」と言った。すると、破れたモッコが降りてきて、ウナー主はそれに乗った。そして、ウナー主が天に昇って行く途中で、そのモッコはブチッと切れてしまい、海の中にポトンと落ちてしまった。そして「アカナーよー」と叫びながら、おぼれて死んでしまったそうだ。
また、一方のアカナー主は天に昇られて、お月様の中に入った。お月様のことを昔はトートーメーと言っていたよ、トートーメーさいとね。お月様の中で、片足のアカナーは、いつも東の海から西の海へ、潮汲みに行かれたそうだ。
私が子どもの頃は、月夜には、「ああ、あの中にアカナー主がいらっしゃるんだね」と思っていたよ。