読谷村しまくとぅば「むんがたい」

アカナー主とウナー主 あかなーすーとうなーすー

話者 具志堅タケ(1914・T3) 地域 儀間 時間 02:45
  • しまくとぅば
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 (んかし)よ、アカナー(すー)とぅウナー(すー)んにぬ(ちゅ)がめんしぇーたんでぃ。アカナー(すー)んでぃぬ(ちゅ)ぉ、大変(いっぺー)()(ちゅ)やみしぇーてぃ、(なさけ)(ぶか)(ちゅ)やみしぇーたんでぃしが。ウナー(すー)んでぃしぇー、()(むん)なやーに(わら)(ちゃー)(ぬー)んうちゅ(くゎ)いてーぬふーじや。


 しさぐとぅ、今度(くんど)ぉアカナー(すー)や、「なー、くり()ちきとーちーねー、此処(くま)(ちゅ)(ちゃー)や、(わら)(ちゃー)んむる(ぬく)さんむん。ちゃーがらし、くれー(くる)さんねーならんさー」んでぃやーに(はか)らいし。


 さぐとぅ、今度(くんど)ぉアカナー(すー)(ふに)(つく)やーに、(てぃー)ちぇー(きー)さーに(よー)がーひーがーさーに()(ちゅく)いし。今度(くんど)ぉ、なー(てぃー)ちぇー(んーちゃ)さーに立派(りっぱ)ぐゎーすぐ(つく)てぃさぐとぅ。ウナー(すー)(やー)んかい(ぅん)ぢゃーに、「ウナーよー、りっか二人(たい)(いゆ)(くゎー)しーが()か。(いゆ)(くゎー)しー勝負(すーぶー)しっ()ぅ」んちさぐとぅ。「あんすみ、あんしぇー()ちゅさ」んでぃやーにしぇーぎさん。


 あんとぅ、(はーま)んかい(そー)てぃ(ぅん)ぢゃーに、「ぃやーや(ふね)ぇじる(いら)ぶが」んちゃぐとぅ、うぬ立派(りっぱ)(ちゅく)らっとーぬ、(んちゃ)(ちゅく)らっとーぬ(ふに)(とぅ)ってぃさぐとぅ。りか、あんしぇーんち、(おき)んかい(くー)(ぅん)ぢさぐとぅ。


 アカナー(すー)やなー(いゆ)ぉどんどん(くゎー)すしが、くぬウナー(すー)釣竿(つりざお)んかいてぃーちんかからんなてぃさぐとぅ。「いぇーアカナー、ぃやー(いゆ)ぉゆー()りーしが、()(わん)にんかい、(ぬー)んち(いゆ)ぉむる(くゎー)らんがやー」んちさぐとぅ。「いぇーうりんかいや知恵(じんぶん)るやんどー、コツぬる()んどー。ぃやーや(ふに)(とぅむ)んかい小便(しーばい)しっくゎーさーに、(ひさ)さーにポンポン(たた)けーわ。あんしーねーじこー(いゆ)(くゎー)さりーさ」んちさぐとぅ。「えー、あんやみ」んでぃやーに、小便(しーばい)ひっちゃきやーにトントン(たた)ちゃぐとぅ、うれー(んちゃ)しる(ちゅく)てーぐとぅ、うぬ(ふね)()りやーに(うみ)んかいポトンさぐとぅ。「くぬひゃーや、(わん)(だま)しくゎたんやー」んち、うり(いー)じさぐとぅ、(うぃー)じなー、くりうちゅ(くゎ)らなやーんでぃそーぬ(ばー)に。


 さぐとぅなー、アカナー(すー)(たまし)()ぎやーに、(てぃぬ)んかい()かてぃ、トートーメー、あぬお月様(つきさま)てー、「トートーメーさいトートーメー、(かな)さみしぇーらー(かに)オーダー()るち(くぅ)みそーり。(みっくゎ)さみしぇーらー()りオーダー()るち(くぅ)みそーり」んち、(てぃぬ)んかい()ぃうさーちさぐとぅ。


 (かに)オーダーぬ()りやーに、うぬアカナー(すー)(かに)オーダーんかい()いんでぃすぬとぅくる、アカナーや其処(ぅんま)んかい(いー)(かち)みらりやーに。片足(かたあし)()んくーらってぃ、片足(かたあし)()らーなてぃ、うぬアカナー(すー)や。やしが、うぬ(てぃぬ)んかいそろそろと(ぬぶ)てぃめんそーちゃんでぃ。


 あんさぐとぅ、またウナー(すー)んうり真似(ねーび)さーに、「トートーメーさいトートーメー、(かな)さみしぇーらー(かに)オーダー()るち(くぅ)みそーり。(みっくゎ)さみしぇーらー()りオーダー()るち(くぅ)みそーり」んちさぐとぅ。()りオーダーぬ()りてぃ(ちゃ)ぐとぅ、うりんかい()てぃさぐとぅ。ウナー(すー)(てぃん)(なか)ばまでぃ(ぅん)ぢさぐとぅ、うぬ()りオーダーやけっ()りやーに、(うみ)()(なか)かいポトンみかち()てぃてぃさぐとぅ。「アカナーよー」、ボロンボロンボロンさーに、うぬなー(うぃー)じ、(おぼ)()にさんでぃぬくとぅやしが。


 また、一方(いっぽう)ぬアカナー(すー)や、(てぃぬ)んかいめんそーやーに、あぬお月様(つきさま)んかい、トートーメーぬ(なか)んかい()っち。(んかし)ぇ、あぬお月様(つきさま)んかいトートーメーでぃたんよーや、トートーメーさい。うりが(なか)んかい()っち、(あがり)(うみ)から西(いり)(うみ)んかい、ちゃー(うす)()みーが、片足(かたひさ)さーにめんしぇーたんでぃ。


 (わん)ねー(わらび)ぐゎーそーいねー、(ちちゅ)(ゆー)ねー、「あー、ありんかいアカナー(すー)がめんしぇーさーやー」でぃ、(うむ)とーたんどー。

 昔ね、アカナー主とウナー主という人がいらしたそうだ。アカナー主という人は、とても人柄もよく情深い人だったそうだが。ウナー主というのは、悪い人で、子どもでも構わずに喰っていたようだね。


 そこで、アカナー主は、「もう、こいつを生かしておくと、そこの人たちや子どもも残らず喰われてしまう。どうにかしてこいつを退治しなければいけない」とある計らいをした。


 そうして、アカナー主は二(そう)の船を造った。一艘は木で不格好に造り、もう一艘は立派な土船を造った。ウナー主の家に行き、「ウナーよ、二人で魚釣りに行こう。釣り勝負をしよう」と誘うと、「そうか、それなら行こう」と行ったようだ。


 


 それで、海へ連れて行き、「お前は、どの船がいいか」と聞いたら、(ウナー主は)立派な土船を選んだ。そうして、二人は沖へと船を漕いで行った。



 アカナー主は魚が次々と釣れたが、ウナー主の釣竿にはちっとも魚がかからない。それで、「おいアカナー、お前はそんなに魚が釣れるのに、どうして私には、全然釣れないのか」と聞いた。すると、「ああ、それはコツがあるよ、知恵をはたらかせるんだよ。船尾に小便をひっかけて、足でポンポン叩くといいよ。そうすれば魚はよく釣れるよ」と言った。(ウナー主が)「ああそうなのか」と、小便をひっかけて船尾をトントン叩くと、土船は割れて海へ落ちてしまった。「この野郎、私を騙しやがったなあ」と、(アカナー主)を喰ってやろうと必死に泳いだ。


 


 そしたら、アカナー主はびっくりして天を仰ぎ、お月様に向かって、「トートーメーさい(お月様)トートーメー、私を愛しく思うなら鉄のモッコを降ろして下さい。憎いとお思いなら破れたモッコを降ろして下さい」と手を合わせた。


 すると、鉄のモッコが降りて来て、アカナー主がそれに乗ろうとするところに、ウナー主が泳ぎ着き掴まえられてしまった。そうして片足を噛み切られて、アカナー主は片足になってしまったが、そのままするすると天へ昇って行かれたそうだ。


 そうしたら、またウナー主もそれを真似て、「トートーメーさいトートーメー、愛しく思うなら鉄のモッコを降ろして下さい。憎いとお思いなら破れたモッコを降ろして下さい」と言った。すると、破れたモッコが降りてきて、ウナー主はそれに乗った。そして、ウナー主が天に昇って行く途中で、そのモッコはブチッと切れてしまい、海の中にポトンと落ちてしまった。そして「アカナーよー」と叫びながら、おぼれて死んでしまったそうだ。


 また、一方のアカナー主は天に昇られて、お月様の中に入った。お月様のことを昔はトートーメーと言っていたよ、トートーメーさいとね。お月様の中で、片足のアカナーは、いつも東の海から西の海へ、潮汲みに行かれたそうだ。



 私が子どもの頃は、月夜には、「ああ、あの中にアカナー主がいらっしゃるんだね」と思っていたよ。

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