読谷村しまくとぅば「むんがたい」

ワランチャガーとスネークガマ わらんちゃがーとすねーくがま

話者 新城平永(1921・T10) 地域 宇座 時間 02:17
  • しまくとぅば
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 医学(いがく)博士(はかせ)でもあって宣教師(せんきょうし)でもある(ひと)が、ペッテルハイム、波之上(なんみー)眼鏡(がんちょー)でぃちょーる(ちゅ)て。


 あぬ(ちゅ)がめんそーやーいよ、沖縄(うちなー)仏教(ぶっきょう)ぬる(うふ)さぐとぅ、あんさーいうぬキリスト(おし)()むために、何処(まー)んくぃ(あっ)ちぇーるふーじ。


 あんさーい、宇座(うーざ)(あざ)んかいめんそーちゃんでぃよ。なー、(なま)(いー)るんしぇー区長(くちょう)、あぬ宇座(うーざ)(うっち)でぃちて、(うっち)んち(なま)区長(くちょう)さんやさ。うぬ(ちゅ)御供(うとぅむ)して、何処(まー)んくぃ(あっ)ちぇーるふーじ。なー(あち)さぬよ(みじ)(ふー)しくなてーるばーて。


 あんさーい、「何処(まー)がら()美味(まー)(みじ)()(とぅくる)(ねー)んがやー、(みじ)(ふー)さんでー」でぃちさぐとぅ、「此処(くま)(みじ)美味(まー)さいびんどーさい」んちうさぎたぐとぅよ、「ワーラー、ワーラー」んちてー。あんし、「うり何処(まー)から(ぅん)じーが」でぃち()ちぇーみしぇーるふーじ。


 あんさぐとぅ、宇座(うーじゃ)(うっち)ぇなー言葉(くとぅば)()からんるあぐとぅ、「何処(まー)からうぬ(みじ)(ぅん)じーが」んちゃぐとぅ。あんさ、「クチャ、クチャぬ(なか)から」でぃち、()ちゃぐとぅ。


 あんすぐとぅ、うぬ通訳(つうやく)大概(てーげー)ぬーぐゎーやてーんて。「ンチャ」んでぃ()ちぇーるばーてー、「(んちゃ)(なか)から(ぅん)じーんでぃ、()んでー」でぃち、通訳(つうやく)ぉありさぐとぅ。あんさ、「ワーラー」とぅ「ンチャ」とぅ()りやーいよ、「ワーラー、ンチャ、ワーラーンチャ」でぃち、うぬべッテルハイムが()ちゃぐとぅ、(なま)ちきてぃワランチャガーなとーんばーよ。


 あんさーいや、うぬ(みじ)ぇちゃー(なが)りひてぃるやぐとぅ、ちょーどぅ瀬名波(しなは)ガーとー()ぬむん、ちゃー(なが)りーるやぐとぅて。あんさーい、「うぬ(みじ)何処(まー)んかい(なが)りてぃ()いが」んちさぐとぅ。また、其処(うま)(ちちゃ)さるあぐとぅ、其処(ぅんま)までーちけーち(ぅん)ぢぇーるふーじ。


 あんさぐとぅ、「いっぺー(すが)りーびんどーさい。(ひじゅ)(かじ)ぐゎーぬ()上等(じょうとう)やいびんどー。(なか)んかい()みしぇーみ」でぃちゃぐとぅよ。あんさぐとぅなー、ペッテルハイムぉてー、ハブぬ(ぅん)じーがすらー()からんむでぃ、ハブんかい(くゎー)りーねーちゃーすがんちてー、「スネークカマレル」んでぃ()ちぇーぬふーじ。


 あんさぐとぅ、「(ぬー)んでぃ()みしぇーが、(なま)ぁ」んち、また通訳(つうやく)んかい()ちゃぐとぅやー、「スネークガマんでぃる()やびんでー」でぃち。スネークカマレル(ヘビに()まれる)んでぃる()ちょーぬしじやしがやよー。通訳(つうやく)ぉ「スネークガマんでぃる()やびんでー」でぃちさぐとぅ、(なま)ちきてぃスネークガマなとーんばー。

 医学博士で宣教師でもあった、ペッテルハイムは波之上(なんみー)眼鏡(がんちょー)と呼ばれていた。


 その人が沖縄にいらして、沖縄は仏教が多いから、キリスト教の布教のためにあちこち回っていたようだ。



 そうして、宇座に来られたそうだね。そこで、宇座(うっち)、今で言う区長さんだがね。その宇座掟がペッテルハイムの御供をして、あちこち案内したようだ。そしたら、もう暑くて水が欲しくなったんだろうね。


 それで、「どこかに美味しい水はないかな、水が飲みたいな」と言われたので、「ここの水は美味しいですよ」と差し上げたら、「ワーラー、ワーラー」と言ったんだって。そして、「これはどこから湧き出ているのか」と聞かれたようだ。


 宇座掟はもう言葉は分からないんだから、「どこから湧き出ているのか」と聞かれて困ってしまった。それで、「クチャ、クチャの中から」と言った。


 たぶん通訳もいい加減だったんでしょうね。通訳は「ンチャ」と言ったんだって。「(んちゃ)の中から出ていると言っています」と訳してしまった。それで、「ワーラー」と「ンチャ」をつないで、「ワーラー、ンチャ、ワーラーンチャ」と、そのペッテルハイムが言ったので、その時からその井泉はワランチャガーと呼ばれているんだよ。


 それから、その水は瀬名波ガーと同じようにずっと流れ出ているのでね。そこで、ペッテルハイムが、「その水はどこへ流れているのか」と尋ねた。近い場所だったので、そこまで案内したらしい。



 そこで、「とても涼しいですよ。冷たい風が気持ち良いですよ、中に入りますか」と誘った。そしたらもう、ペッテルハイムはハブが出てくるかもしれない、ハブにでも咬まれたらどうしようと思って、「スネークカマレル」と言ったようだ。


 それで、「今、何とおっしゃったんだ」と通訳に聞くと、「スネークガマとおっしゃっていますよ」と訳した。ペッテルハイムはスネークカマレル(ヘビに咬まれる)と言っているのに、通訳は「スネークガマとおっしゃっていますよ」と言ったので、今でも、スネークガマと呼ばれているんだ。

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解説

1846~1854年の間、沖縄に滞在した宣教師、医師であるベッテルハイムが宇座を訪れ、ここの水を飲んだという伝説が残る井戸。※但し、『琉球評定所記録』のベッテルハイム関係資料にベッテルハイムが読谷山間切を訪れたという記録は見えない。(「宇座ガイドマップ」宇座のカー、ワランジャ井戸(ガー))

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