読谷村しまくとぅば「むんがたい」

豆と藁と炭 まめとわらとすみ

話者 島袋亀次郎(1895・M28) 地域 座喜味 時間 03:59
  • しまくとぅば
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 (ぅんかし)(わん)ねーくれー、学校(がっこう)先生(しんしー)(たー)からる()ちゃる(はじ)やんどー。


 三名(さんめい)ぬいっぺー()友達(どぅし)ぐゎーが(をぅ)たんでぃ。うぬ三名(さんめい)友達(どぅし)ぐゎーでぃしぇー、一人(ちゅい)(まめ)ジョー、また(わら)ベー、(すみ)ベー、うぬ三人(みっちゃい)(をぅ)たんでぃ。


 (まめ)ジョーでぃしぇー、(なま)、くまぬ()空豆(とーまーみー)やしが。うぬ空豆(とーまーみー)(くち)()(くるー)なとーしぇー、如何(ちゃー)意味合(ちむえー)し、うぬ空豆(とーまーみー)(くち)(くるー)やがやー。くりから(はじ)まいしが、うり(くるー)なたる理由(りゆう)やしが。


 ある(とき)、うぬ三人(みっちゃい)仲良(なかよ)友達(どぅし)んちゃーや、(たげ)(あっ)ちゃがちー、散歩(さんぽ)さがちー、是非(じふぃ)(わた)らんとーならん(かーら)はっちゃかてぃ。うぬ(かーら)から(わた)りわるないしがなー、(わた)らんねー何処(まー)んかに(あっ)ちゅる(とぅくる)(ねー)らん。


 あんとぅ、(わら)ベーやなー(なげ)(なが)はとぅ、「とー、ぃやーや其処(ぅんま)んから、くぬ(はし)からあぬ(はし)んかい(よこ)たわいねー、彼処(あま)()ちゅる(はじ)やぐとぅ。ぃやー(うぃー)から(あっ)ちゃーに(わた)らな」、かんし相談(そうだのー)しっ。「いー、あんすん。よろしい」んでぃやーに。「とーあんしぇー、(わん)ねー(はし)ないる意味合(ちむえー)やさやー。とー(わー)がなー彼処(あま)んかい、彼処(あま)んかい(はし)()きーんどー」、くぬ(わら)ベーが()やーに、(はし)()きてぃ。「とー、(はし)()かとーさ、(あっ)けー、(たー)から(あっ)ちゅが」、くりが(はじ)またるばー。


 「(わん)から(さち)ないみ」「一人(ちゅい)なーる(あっ)かりーる、うぬ二人(たい)なーんちゃ(あっ)からん」・・。また、うぬ(わら)ベーがー()っちゆーさんでぃやーに、(かんな)一人(ちゅい)なー、一人(ちゅい)なーるないる。あんとぅなー、(まめ)ジョーや、「んだ、(わん)から(さち)なら」でぃ()ちゃしが。(すみ)ベーや(ゆく)(ちゅー)さぬ、「ゐーいゐー、(わん)から(さち)ないる。ぃやーや(わん)やかー(さち)なてーならん」、あんさーいくぬ(すみ)ベーが(さち)なてぃ(ぅん)じたん。あんとぅ、うぬ(すみ)ベーや(いふ)(くくる)(わっ)さる(むん)やてーんてー。


 あー、うりがなー(さち)なてぃさぐとぅ、うぬ(すみ)ベーでぃいる(むの)ぉ、自分(どぅー)(ちび)んかい、何処(まー)がらんかい、うれー(しみ)るやぐとぅ、(ふぃー)ぐゎーぬ(いふ)()ちょーてーぎさるふーじ。(ふぃー)ぐゎーぬ()ちょーてーぎさるふーじなてぃさぐとぅ。うぬ(わら)べーからかんし(わた)てぃ()ちゅんでぃ、とうとう途中(とちゅう)()(なか)(ちょー)時分(じぶん)に、なーうぬ(ふぃー)ぐゎー()ぎくなやーに、(わら)べーとぅ摩擦(まさつ)さーに、(わら)べーやなー(たん)べーんかい()かったるばー。()かったぐとぅ、なー今度(くんど)ぉ、なー仕方(しかたー)ならん(こー)りてぃ、(かーら)んかい二人(たい)ぐーな(なが)さってぃ。(わら)べーやまた(めー)さってぃ(をぅー)らんばー。かんやたんでぃさ。


 あんやとぅ、うぬ(まめ)ジョーや、「二人(たい)友達(ともだち)ぇなー、こういう(かーら)んかい(なが)さってぃ。くれー(わん)ねー、(わん)一人(ちゅい)()ちちょーてぃなー、くれー大変(たいへん)なことになったねー」と()って、非常(ひじょう)(あわ)りっし、ワァーないワァーない()ち。ちゃっぴ()ちゃさぐとぅ。じこー()ち、うぬ(くち)ぇなーちゃっぴん()ちゃぐとぅ、今度(くんど)(くち)如何(いか)(くー)ららんなやーに。



 (くー)ららんなたぐとぅ、其処(ぅんま)からまた、女学生(じょがくせい)一人(ちゅい)(あっ)ちゅたんでぃしが。うりが、「()が、ぃやーやあんしぇー、ぃやー(くち)(くー)ららんるありー」でぃちゃぐとぅ。「なー。ちゃっぴん()ちゅんでぃうりしちゃぐとぅ(くち)(くー)ららん、かんなとーんれー(ねえ)さん。どうにか(のー)(くぃ)らんなー(ねえ)さん」でぃ()ちゃぐとぅ。「とーあんしぇー、ぃやー(くち)(くー)いるないさに」でぃ()やーに、(はり)木綿糸(もめんいと)()して、うぬ(まめ)ジョーぬ(くち)ぇ、うりが黒糸(くるいーちゅー)さーに(のー)てぃとぅらちゃんでぃ。


 とーあんさ、うぬちゃっぴん()りとーる(くち)ぇ、なー黒糸(くるいーちゅー)さーに(のー)てぃさぐとぅ、うぬ空豆(とーまーみー)(くち)ぇ、うりが(のー)ちゃ(くるー)なてぃ、()(なか)から生存(せいぞん)()ちゅんでぃんでー。


 とー、うれーいったー()からんてーるむんやれー、空豆(とーまーみー)(くち)(くるー)なとーしぇーあんしやんでぃさ。これもおとぎ(ばなし)

 昔、この話は学校で先生から聞いたと思うよ。



 ある所に、とても仲の良い三人の友達がいたそうだ。その友達というのは、豆ぞう、藁べー、炭ベーの三人だったって。


 豆ぞうというのは、今でいうそら豆のことね。そのそら豆の口が黒くなっているのは、どうしてかということだがね。これから私が話すのが、そのそら豆の口がなぜ黒くなったかということなんだよ。


 ある時、その三人の仲良し友達が、一緒に散歩しながら歩いていると、途中で川にさしかかった。その川を渡らないことにはどこにも道がなかった。



 そこで、藁べーは長さがあるので、「さあ、君がそこの端から向こうの端まで横たわれば、向こう岸に届くはずだからね。君の上から歩いて渡ろう」と、三人は相談をした。「うん、そうしよう」と言って、「それなら、私が橋になるわけだね。私が横になって向こう岸まで橋を架けるよ」と、藁べーが橋となった。「さあ、橋は架かっているよ。歩きなさい、誰から先に渡るのか」と始まったわけだ。


 「私から先に渡ろうか」「一人ずつしか渡れない、二人一緒には渡れないよ」、藁べーの橋では二人一緒に渡るのは無理だから、一人ずつしか行けないということだった。それで、豆ぞうは、「それなら、私が先に行こう」と言ったが、炭ベーは欲深くて、「駄目だ、私が先に行く。君が私より先になってはいけない」と、炭ベーが先に渡って行った。炭ベーは少し心根が悪かったんでしょうね。


 そしたら、先に行った炭ベーのお尻か、体の一部に燃えかすが少し付いていたんでしょうね。炭なんだから、火が少し残っていたんだね。炭べーが渡って行く途中、真ん中まで来ると藁べーと擦り合って火が大きくなり、藁べーは炭べーに焼かれてしまった。それで、藁べーの橋は壊れ二人とも川に流されてしまった。藁べーは燃やされてしまったということさ。






 そしたら、豆ぞうは、「二人の友達が川に流されてしまった。私一人だけ生き残ってしまって、大変なことになった」と言って、ひどく悲しんでワーワー泣いた。大きく口を開けてワーワーと泣いたもんだから、今度は口が開きっぱなしでどうしても閉じることができなくなってしまった。


 すると、口が開いたままの豆ぞうの近くから、一人の女学生が通りがかったんだって。その女学生が、「どうしたの、口を開じることができないの」と聞いてきた。「もう、大声で泣いてしまったら、口を閉じることができなくなったんですよ、お姉さん。どうにか私の口を治してください」と言った。「それじゃ、君の口を閉じてあげましょう」と言って、木綿糸と針を出して、豆ぞうの口を黒い糸で縫ってくれたんだって。


 そうして、とても大きく開いていた口を、黒い糸で縫ったものだから、そら豆の口は黒くなってしまったということさ。



 そういうことでそら豆の口は黒くなったんだってさ。君たちはそれを知らなかったでしょう。これはおとぎ話ね。

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