読谷村しまくとぅば「むんがたい」

マンサン祝い まんさんいわい

話者 宮城ヤス(1911・M44) 地域 大木 時間 02:33
  • しまくとぅば
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 なー(ぅんかし)ぬマンサンユーエーぬお(はなし)しっ、うんぬきーびら。


 (ぅんかし)ぇなー、大概(てーげー)なー明治(めいじ)時代(じだい)までぃぬ人達(しんか)ぁなーボージャー()しぇーからー、一週間(いっしゅうかん)までーなー夜伽(ゆーとぅじ)んち()たるばーてー。あんしうぬ夜伽(ゆーとぅじ)んりねー、なー一日目(いちにちめー)からんち三日(さんにち)や、ユッカジールーんち(また)四日目(よっかめ)親子(おやこ)のとっても健康(けんこう)であるんりやーなかい、なー茶請(ちゃわ)きぐゎーん()んすがてぃ、じこーうりやたしが。


 あんさーに、ある(ところ)(むかし)なー()しむぬ(くゎ)()しみそーらん(とぅくる)んかい、じこーが可惜(あたら)さし、なー()五年間(ごねんかん)()らてーる(まやー)ぬ、雄猫(うーまやー)(をぅー)てーる(はじ)えいびーさ。あんし、自分(どぅー)やなー(くゎ)()さんるあたしが、(なが)れーんが(えーか)ありしなー、うぬ其処(ぅんま)ボージャー()ちさくとぅ。


 今度(くんど)ぉうぬ(まやー)やなー、あんしぇーならんむんりやーなかい、其処(ぅんま)から()てぃてぃ、かーま(やま)(みー)んかい()てぃてぃるあしが。


 今度(くんど)ぉうぬ(まやー)()きてぃ(ちゃー)なかい、其処(ぅんま)ぬボージャースージー、六日(るくにち)(ゆる)()きてぃ(ちゃー)なかい、なー(ちゅ)んかいなてぃ。あんさーにマンサン披露(ひる)ぎてぃ歌三線(うたさんしん)そーに。(じゅー)其処(ぅんま)んかい(むする)ぬ、其処(ぅんま)んかい(じゅー)(くゎっか)さーなかい、なーやっぱし人間(にんげぬ)んかい()きてぃ。あんさーいなー()ぬぐとぅ歌三線(うたさんしん)ししっし、あんし(んなー)なー(けー)てぃ()ぢ。


 今度(くんどー)なー、ある(ちゅ)ぬうりが()じてぃ()ちゅし(うー)てぃ()ちゃぐとぅ。やっぱし其処(ぅんま)主人(しゅじん)()てぃてーる、うぬ(やま)んかい(ぬぶ)てぃ()ぢ。()ちゃぐとぅ、うぬ(まやー)がなー(たぬき)みたような、じこーちゃひんな(まやー)なやーに。


 あんさぐとぅ、やっぱし(ぅんかし)からくぬあぬー(まやー)りしぇーなー、(ぬーし)命取(ぬちとぅ)(むん)(また)()きてぃ(たぬき)んかい()きたい、いろんな(もの)人間(にんげぬ)んかい()きたいすぐとぅ、(なが)れーのー()れいるむのーあらん。(とぅ)(けー)(けー)(まやー)でも動物(どうぶつ)やてぃん(いん)やてぃん(ぬー)やてぃん、(ぬーし)とぅ主人(しゅじん)とぅぬうり、()(とぅ)みやーなかい、かんし。


 やぐとぅ生物(いちむし)やたんてーか、くぬ主人(しゅじん)可愛(かな)さしなー自分(どぅー)()むる(むぬ)()まさんぐとぅにし、腹一(はらてぃー)()みてぃしーねー、うんぐとぅしなー()きてぃ(ちゃ)(ぬー)さいすぐとぅ。なー生物(いちむし)やてぃん(とぅ)(けー)(けー)い、(なが)れーのー()らーんぐとぅなー、ありすしる(はなし)()ちょーやびーん。


 あんさーい、(なまー)なー(たたん)ちん()しが、(ぅんかし)(たたん)ちん(ねー)らんニクブクとぅか、それから(むする)とぅか敷物(しきむん)ぐゎーんな、うんぐとぅし自分(どぅー)くる(ちく)てぃるすてーぐとぅ。うぬ(むする)隙間(ひーじゃ)隙間(ひーじゃ)()きてー()ちゅる(むの)ぉあらんでぃち()しや、其処(ぅんま)んかい(じゅ)(くゎっくゎ)ちゃい(ぬー)さい、悪者(やなむん)(じゅ)(くゎっくゎ)ちゃい(ぬー)さいすんりちるし。


 またくぬ(わらばー)たー枕元(まっくゎぐゎぬ)んかいやてぃん、あぬーサンぐゎー(ゆー)てぃ()ちゅんとぅか刃物(はむん)()ちゅんとぅかしぇー、うんな化物(ばきむん)ぬじこー(うとぅ)るさしすんりちる、ボージャー(たー)()まりーねー(ぅんかし)ぇサンぐゎー(ゆー)てぃ()ちゃい、刃物(はむん)ぐゎー()ちゃい(ぬー)さいする(くとぅ)なとーびん。


 あんさーなかいる(ぅんかし)ぇくぬマンサンりしぇー歌三線(うたさんしん)りしぇー、なーじこーがありやぐとぅ。なー友達(どぅし)ぐゎーぬ(ちゃ)(あち)まてぃ、一人(ちゅい)(がー)るーなーユートゥジし。一週間目(いっしゅうかんめー)ねー、丁度(ちょうどう)()まりてぃ七日目(なのかめー)ねー名字(のーじ)ぐゎーん()きてぃマンサンち、チチョーデー(あち)まてぃする(くとぅ)なとーるくとぅやいびーん。

 これから、昔のマンサン祝い(出産祝い)のお話をいたしましょう。


 昔の人たちは、子どもが生まれたら夜伽といって、ジール(地炉)のある産室で母子を見守る風習があった。それは、一日目、三日目、また四日ジールといって、四日目には母子が健康であるということで、お茶請けも作って祝っていた。


 昔、ある所になかなか子どもに恵まれない家庭が、雄猫を四、五年もの間、大事に可愛がっていたようだ。子どもに恵まれずに猫を長いこと飼っていたが、やっとその主人に子どもが生まれたんだって。



 それで、猫をそのまま飼うわけにはいかないと、遠くの山奥に捨てたようだね。



 すると、その猫が人間に化けて、マンサン祝いにやって来たんだって。六日目のその祝いの座で歌三線を披露している時に、尻尾を(むしろ)の間に隠して、人間になりすまして座っていた。そうして、皆と同じように歌三線を楽しんでから、それぞれ帰って行った。



 そしたら、山の方へ行く者がいたので、不思議に思った人が後を追って行くと、赤子の生まれた家の主人が猫を捨てた山へ登って行った。そこで見たのは、狸のような大きな猫だった。


 昔からやっぱり猫というのは、主人の命を取ると言われているからね。また狸や他の動物に化けたり、人間に化けたりするから、一つの生き物を長いこと飼うものではない。動物を飼う時にはいつでも、飼い主としての立場をはっきりさせるべきだということだね。


 だから、動物でも主人が可愛がりすぎて、食事も同じようにすると、そのように化けたりするそうだ。動物は常に取り替えながら飼うべきで、一匹だけを長い間飼うものではない、という話を聞いています。



 それから、今はもう畳もあるが、昔は畳というものはなく、各々でニクブク(藁筵(わらむしろ))や筵などの敷物を作って敷いていた。筵を敷く時にはヤナムン(魔物)がそこに尻尾を隠したりすることがあるから、隙間を空けるものではないといわれているんだよ。


 また、子どもの枕元にサンを結んで置いたり、刃物を置いたりするのは、それをヤナムンがとても恐がるんだって。それで、昔は子どもが生まれたら、サンを結って置いたり、刃物を置いたりしたそうです。



 昔のマンサン祝いというのはとても大切なことで、そのようなヤナムンを払うために、一人ずつ交代で夜伽をしてあげた。それで、生まれて七日目には名前も付けて、親戚兄弟集まってマンサン祝いをするようになったということです。

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