第一節　防衛庁関係資料にみる読谷山村と沖縄戦
空襲と艦砲射撃

６　一月二十二日の空襲

（天気　晴、雲量五〜六、雲高一五〇〇〜二〇〇〇米、静穏）

　この日の空襲は、朝六時五十分に約一〇〇機が第一波として来襲し、午後七時四十分まで延べ約七八〇機が来襲した。敵機は主として飛行場を、一部をもって港湾船舶及び市街地に対して銃爆撃を加えた。
　米機動部隊の艦載機は喜界島以南の南西諸島の全域に来襲した。沖縄本島には六時十分に與座岳の海軍電波探信儀が編隊群の本島接近を探知したため、軍司令官は六時三十五分、本島地区に空襲警報を発令した。わが高射砲部隊は勇戦したとして後日、軍司令官から賞詞を受けた。二十二日の戦果は沖縄本島に限っていえば飛行機四四機撃墜、三六機撃破。陸軍の戦死は将校以下七六名、戦傷は将校以下一一四名、行方不明（海上）三九名。飛行機は焼失五機、大破五機、中破一機、小破二機。海軍の部はいずれも不明である。沖縄本島の民間の部では死者三五名、傷者三四名。建物は炎上四〇戸、大破一一戸と報じられた 。

　島袋※※（座喜味）は、当時九一七三部隊の炊事に徴用されていたが、日記にこの日の空襲のことを以下のように記している。

　また、座喜味出身の津波※※（旧姓比嘉）は、祖父母の家をこの日の空襲で失った。

第五十六飛行場大隊（字座喜味在）の戦闘詳報
　「〇六三五空襲警報発令」「戦闘準備ノ完璧ヲ期シツツ待機中〇六四五敵ＴＢＦ四機東方ヨリ飛行場上空ニ侵入　我ガ火砲マタ一斉ニ砲門ヲ開ク　爾後一七二〇ニ至ル間敵ハ五次ニ亘リ来襲ス」「〇七一〇Ｆ６Ｆ（ヘルキャット）八機ハ西方ヨリ侵入座喜味城址ヲ中心トシテ旋回シアリタルモ東方喜名上空ニ於テ突如反転急降下ヲ以テ飛行場北端ノ高射機関砲陣地並ニ特掩体群ニ対シ砲撃セントス」「一時西方海上ニ退避セル敵ハ更ニ新手ヲ加ヘ再ヒ上空ヲ制空警戒ニ任ジアルモノノ如ク其ノ数三十有余ニ上リタルコトアリ」「一〇三五Ｆ６Ｆ四機単縦陣トナリ海上ヨリ迂回　再ヒ喜名上空ヨリ森林ヲ利用超低空ニテ特掩体群ヲ砲撃セント来襲ス　対空射撃部隊ハ全力ヲ以テ猛射スレハ一番機ハ機関部ヨリ火ヲ発シ紅蓮ニ焔真黒ノ機体ニ映ヘ　一入（ひとしお）物凄シ断末魔ノ敵機ハ北方ニ反転離脱セントシタルモ更ニ我カ注打猛撃ヲ受ケ高度漸次降下シ遂ニ北方海面ニ真白キ水煙ヲ挙ケ墜落スルヲ望見ス」「敵機ハ依然執拗ニ上空ニ在リ二機東ニ去レハ再ヒ西ヨリ三機南ニ去ルヲ見レバ更ニ北ニ爆音近接ヲ聞ク白雲漸ク其ノ量ヲ増シ悠々北ニ流ル　高サ約一〇〇〇敵機ハ巧ミニ雲ヲ利用爆音ヲ聞クモ機影ヲ見サルコトアリ」「一三三〇高度約二五〇〇ヲ以テ那覇方向ヨリ北上スルＳＢ２Ｃ―１（ヘルバイダー）八機ヲ見ル飛行場西方約一〇〇〇米ヲ依然北進ヲ続ケ伊江島ニ向フト見セ雲上ニ於テ東ニ転針喜名上空ニ於テ反転二群ニ別レ　一ハ掩体群ニ一ハ偽飛行機群ニ向ヒ縫糸急降下突撃態勢ニ出ス」「敵ハ例ノ如ク太陽ヲ背ニシテ攻撃シ来タリ」「爆煙静カニ東ニ流レ暫クシテ消滅スルト共ニ敵機亦去リ爆音更ニ聞ヘス　戦場一帯動ヨリ静ニ入ル」「一五一〇ニ至リＦ６Ｆ六機漸ク上空ニ現出シ戦場再ヒ静ヨリ動ニ帰リ緊張ノ気颯ツト一帯ヲ蔽フ

敵機侵入状況要図

敵ハ一旦北方雲上ニ退避後雲上ニテ旋回セルモノノ如ク爆音近接スルト見ルヤ突如伊良皆上空ヨリ急降下ヲ以テ再ヒ滑走路及偽飛行機群ニ対シ砲爆撃ヲ加ヘタル後超低空ニテ西方海上ニ脱去ス」「敵ハ再ヒ一〇機ヲ以テ常時上空ヲ哨戒シ攻撃ノ目標ト好機ヲ求メツツアルモノノ如ク爆音シキリナリ」「一六二〇ニ至ルヤ敵Ｆ６Ｆ八機ハ突如座喜味城址並ニ其ノ西方高地ヨリ超低空ヲ以テ侵入高射砲陣地並ニ特掩体群ニ対シ砲爆撃ヲ加ヘ」「一七二〇ＴＢＦ三機高度二〇〇〇ヲ以テ東ヨリ西ヘ更ニ旋回後北ヨリ南ニ脱去ス」

機関砲第一〇五大隊（字楚辺在）の戦闘詳報
　「一五〇〇南方上空漸次天候恢復シ陽光ヲ見ル一五〇九太陽ヲ背ニシ南方上空四〇〇〇米ノ高度ヨリ突如グラマン七機三〇〇米ニ低空シ地上機並ニ機関砲陣地ヲ銃撃シツツ北方ニ脱去ス部隊ハ南方ニ陽光ヲ見タル直後ナルヲ以テ大隊長ノ注意ニ基キ一斉ニ砲門ヲ南方ニ向ケ其ノ来襲ヲ待チタルヲ以テ各中隊夫々必中弾ヲ敵機ニ集中ス」「第一中隊ハ七番機ニ射弾ヲ集中シ命中弾六発ヲ浴ヒセルヤ左翼基部ヨリ火焔ヲ発シ座喜味上空ニ於テ益々黒煙ヲ増加シ将ニ墜落セシト見エタルモ火焔ニ包マレタル補助タンクノミヲ落シテ（之ノ火焔ノ為座喜味部落ニ火災ヲ起ス）与久田方向ニ脱去セシカ遂ニ与久田方面二〇〇〇米ノ海中ニ墜落ス」

第五十六飛行場大隊（北飛行場在）の戦闘詳報
　「第三次攻撃後第四次攻撃迄（一三五〇〜一五二〇）爆煙静カニ東ニ流レ暫クシテ消滅スルト共ニ敵機亦去リ爆音更ニ聞ヘス戦場一帯動ヨリ静ニ入ル　飛行場全体ヲ望見スルニ弾痕散見セラルルヲ以テ補修作業部署決定資料蒐集ノ為本部附将校ヲシテ実地踏査セシム」「一四五〇偵察者帰還シ弾痕約一二〇発不発弾亦数発アリトノ報告ニ接シ各隊ニ左ノ如ク不発弾処理班ノ編成ヲ命スルト共ニ弾痕補修ノ諸準備ヲ促進ス　第五〇三特設警備工兵隊五ケ班　警備中隊三ケ班　補給中隊二ケ班　一ケ班ハ下士官以下五名トス」「部隊ハ一九〇〇ヨリ弾痕補修ヲ開始スヘク至厳ナル警戒裡先ス夕食ヲ喫シ戦力ヲ培養スルト共ニ弾痕補修作業準備ニ万全ヲ期ス」「一八三〇各部隊戦闘指揮所附近ニ結集ヲ完了セルヲ以テ大隊長ハ予メ定メタル作業部署並ニ作業実施上ノ細部注意事項ヲ示シ諸器材諸材料ヲ配当シ二十三日〇四〇〇完成ノ予定ヲ以テ弾痕補修ヲ実施セシム（中略）二四〇〇滑走路誘導路ノ補修ヲ概成ス翌二十三日〇四〇〇全作業ヲ完成飛行場ノ機能発揮ニ些ノ支障ナキニ至リタルヲ以テ補修作業ヲ中止次期戦闘ニ備フ弾痕補修ト同時開始セル飛行機偽装ノ徹底並ニ偽飛行機ノ配置変更モ亦二十三日〇四〇〇終了ス」

沖縄北飛行場被弾状況要図

　この偽飛行機というのは、一般に模擬飛行機と呼ばれる竹製の飛行機のことである。飛行第三戦隊に所属し、北飛行場のことに詳しい宇田川※※はこう述べている。
　「模擬飛行機は、竹製で、プロペラだけは、竹でなく普通のいいプロペラを使っていましたね。滑走路の両わきに土手を築きまして、そこに模擬飛行機を置いたんです。この模擬飛行機はふき流しの風の方向によって、向きを変えるんですよ。上に偽装網をかけて。模擬飛行機を置いてある所を待機壕と飛行場の連中は呼んでいました」。