読谷村史 > 「戦時記録」上巻

ごあいさつ
読谷村教育委員会 教育長 比嘉隆

読谷村教育委員会
教育長 比嘉隆
 このたび、『読谷村史』第五巻資料編4「戦時記録」上巻を発刊することになりました。これもひとえに村史編集委員をはじめ多くの関係者のご協力、ご支援のたまものと深く感謝を申し上げます。
 本編は、読谷村民の戦争体験と各種史資料を駆使して「戦時記録」としてまとめられたものであります。去る大戦で読谷村は米軍の上陸地点となり、三九〇〇余の尊い人命を喪いました。その中を生き抜いてこられた方々の体験は実に生々しく、厳しい戦場の様子を物語るものでありました。
 私も一九九七年から二期四年間編集委員長として、編集に関わらせていただきましたが、九死に一生を得た村民の語る言葉一つ一つに重みを感じ、また沖縄戦体験者の一人として、身につまされるものがございました。
 米国ワシントンの公文書館の正面左右にはそれぞれ「過去に起きたことはプロローグ(序章)である」、「過去を学べ」と書かれてあるそうです。何へのプロローグかと言えば、それは現在、そして未来への序章であり、過去からきちんと学ばない者は将来にまた同じ過ちを犯す、という警告でもあると思います。
 まさに私たちは、過去である「沖縄戦」から多くを学びとり、将来に生かしていかなければなりません。その出発はやはり教育にあると思います。社会教育、学校教育とそれぞれの場で本書を活用していただくことが重要でありますが、わけても学校教育の中で本書が活かされることを期待するものであります。平和教育の根幹は、なによりもまず生命の尊重、殺傷とあらゆる暴力の否定、人権の尊重、自然との共生を推進することであり、学習者に生きる力と喜びを与えるものでなければならないからであります。
 史資料の収集が多岐にわたり、かつ幅広い村民の体験談の聞き取り調査になりました。そして原稿収集と体験記の整理を進めてまいりましたが、分量も多く、上下巻に分けても約九〇〇頁に及ぶ分厚いものになりました。目次を参照され、ご自身で興味を感じるところからお読みいただきたいと思います。
 『読谷村史』全一三巻(別巻一)すべての発刊までには、なお多くの歳月を要します。今後とも関係各位はじめ多くの村民のご協力を仰ぎつつ、編集業務を進めてまいりたいと思います。
 おわりに、貴重な体験をお話しくださいましたすべての村民、関係者の皆さま並びに本編ご執筆の先生方に深く感謝を申し上げて発刊にあたってのごあいさつといたします。

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