読谷村史 > 「戦時記録」上巻

発刊のあいさつ
読谷村史編集委員会 編集委員長 宮城傳

読谷村史編集委員会
編集委員長 宮城傳
 このたび『読谷村史』第五巻資料編4「戦時記録」上巻を発刊するにあたり、編集委員を代表してご挨拶を申し上げます。
 本書は、「序章 近代日本と戦争」「第一章 太平洋戦争と沖縄」「第二章 読谷山村民の戦争体験」の三章で構成され、村民の積極的な協力と関係各位、各機関の多大なるご協力によって刊行の運びとなりました。
 沖縄県は、去る太平洋戦争末期、老若男女を問わず、全ての住民を巻き込んだ、日本の歴史上未曾有の悲惨な戦場となり、僅か三か月間で沖縄県民一二万余の尊い人命が失われました。
 読谷村は、米軍の上陸侵攻地点となったこともあって、「地獄の業火(ごうか)」をもろに浴び、「鉄の暴風」の洗礼を受け、村民四千人近くが犠牲となり更に、村民が営々と築き上げて来た家屋、田畑等の財産や、先人が残した貴重な文化遺産等が完膚なきまでに破壊され、灰燼(かいじん)に帰してしまいました。
 あれから、半世紀余りが過ぎ去りました。あの苛烈非情な沖縄戦を体験した世代も加齢し、耳順(じじゅん)の坂を越えてしまい、極限状況の体験も、遠い記憶の彼方の事件となり、風化の危機に晒されて居ります。
 こうしたなか、本編は読谷村民が体験した沖縄戦の実態・実像を余すところなく掲載し、後世へ負の遺産として戦争体験を語り継いでいくために編集致しました。
 村史編集室では、村民の積極的な協力を得て、調査員が長い時間をかけて「聞き取り調査」を行い、幾度となく「座談会」を開き、また「体験記」を寄稿してもらう等、諸々の資料収集の方法を駆使致しました。更に、関係機関等のご協力を仰ぎながら収集した膨大な資料を、丹念に掘り起こしました。読谷村は、北(読谷)飛行場を抱え、周辺の集落に多くの日本兵が駐屯しました。そこで、村内二二字別の戦争直前及び戦争中の状況を細かく掲載致しました。それから村民の県外及び外地での戦争体験も広く掲載致しました。
 本「戦時記録」上巻は、次に発刊を予定して居ります「戦時記録」下巻と併せて、読谷村民が体験した戦争の真実の記録であります。本編を、全ての読谷村民は勿論のこと、沖縄全県民ひいては、日本全国の人々に読んでいただきたいと祈念いたします。
 本編諸々の記述証言は、戦争が、地球上のあらゆるものを破壊し尽くす悪の極致であり、憎悪と嫌悪の対象以外の何ものでもないことを立証して居ります。
 私達人類に平和の尊さを訴え、平和を築くことへの絶えざる努力が、如何に大切かを知らしめる警鐘になればとの熱い願いを込めて刊行いたしました。
 末尾になりましたが、本編の編纂にご協力下さいました多くの村民をはじめ、各関係機関及び団体、そして玉稿を執筆下さいました諸氏に対しまして厚くお礼を申し上げます。

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