読谷村しまくとぅば「むんがたい」

牛どろぼう うしどろぼう

話者 照屋寛良(1908・M41) 地域 座喜味 時間 01:27
  • しまくとぅば
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 知能(ちのう)(すぐ)りとーぬ盗人(ぬすどぅ)ぬよ、あぬ家庭(ちねー)(うし)(ぬす)みわるやるんりち。やしが(ぬす)みーねーなー、盗人(ぬすどぅ)()()ちゅくとぅんち、知恵(じんぶん)んじゃち身体(どぅー)いっぺー(まーす)()てぃ、坊主(ぼーじ)(すが)いし(ぅん)ぢょーるふーじや。


 坊主(ぼーじ)(ころも)()ち、「(わん)ねー何処(まー)から(ちょー)坊主(ぼーじ)やしが、汝達(にった)家庭(ちねー)んかい大事(でーじ)災難(さいなん)()くとぅ。うぬ災難(さいなん)りーしぇー、汝達(にった)(うし)(わん)ねーちゃーる因果(いんぐゎ)(ぅん)まりがそーたらー、汝達(にった)(うし)実際(じっさい)ぬとぅくる、くれー()兄弟(ちょーでー)やんどー」り()ちぇーるふーじ。


 「はー、私達(わった)(うし)ぬん()兄弟(ちょーでー)んちんあんなー」んちょーるふーじやしが。「くれーやんどー、うぬ証拠(すーく)ぬあんしぇー(あらわ)さびらな」んち、身体(どぅー)いっぺー(まーす)()てぃ(ぅん)ぢょーんりくとぅ。其処(ぅんま)んかい()ちーにとーてぃ(ちぶる)から(ひさ)(ざち)までぃ。


 「いったー(うし)んじゃち(くぃ)みそーれー。汝達(にった)(うし)ぬ『アイエーヤー、()ちゃたるやー兄弟(ちょーでー)』んでぃち、(わん)でーなー、じこー()みーるむんやれー、くれーなーはっきり()兄弟(ちょーでー)やくとぅ。くれー(うし)んかい姿(すがた)(あらわ)らちょーしが、くぬ(うし)汝達(にったー)(なげ)()ちょーちーねー汝達(にった)災難(さいなん)()たいくとぅ、(わん)ねーくり(そー)てぃ()きわるやくとぅ」でぃち。


 ああ(はだか)なてぃ、身体(どぅー)いっぺー()みーるふーじ、其処(ぅんま)家族(やーぐな)ぁなーびっくりし、「とーなー、くぬ(うし)ぇ、なーあんしぇー(そー)てぃ(ぅん)ぢとぅらし、ありがとうやくとぅ にヘーんでぃ()くとぅ、なー(そー)てぃ(ぅん)ぢとぅらし」んち、あんさーい(ぬす)でーるふーじ。


 あんさ、(うし)(まーす)()きんりぬ(くと)ぉ、うりからん(あらわ)りとーるばー。(うし)大事(でーじ)(まーす)()きやんでぃよ。


 とー うっさるやるむん。

 ある所に悪知恵の働く盗人がいたそうだ。その盗人はある家の牛を狙っているが、盗人と呼ばれないように知恵を働かせた。どうしたかというと、体中に塩を塗りたくって、坊主の格好をしてその家に行ったわけさ。


 そして、「私は〇〇から来た坊主だが、お宅には大変な災難がふりかかります。それは、貴方が飼っている牛のことですが、その牛はどういう因果なのか、実は私の兄弟なんですよ」と言ったようだ。


 「はあー?うちの牛が、貴方の兄弟だということがあるか」と言われたが、「いや、その牛は確かに私の兄弟です。それでは、その証拠をお見せしましょう」と盗人は言った。盗人は、その家へ行く前に、頭から爪先まで身体中に塩を塗りたくって行っているからね。


 それで、「貴方の牛を出して下さい。牛が、『アイエーヤー、やっと会えたね、兄弟よ』と、私を舐めてくるはずです。それが、私と牛が兄弟だという証拠です。これは私の兄弟が牛の姿を借りているだけで、長いことお宅に置いておくと災難に遭いますよ。だから、私は兄弟を連れて行かなくちゃいけません」と言って裸になった。


 すると、出て来た牛は盗人の体中を舐めまわしたようだ。そこの家族はびっくりして、「そういうことなら、牛を連れて行ってくれ、ありがたいことだから連れて行ってくれ」と言い、盗人はまんまと牛を盗んだようだ。


 だから、牛は塩が好物だってことは、それからも分かることさ。牛はとても塩が好きなんだってよ。


 はい、これでおしまい。

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