あぬ昔、年寄ぃ夫婦めんしぇーん所ぬ在たん。あんしなー、貧乏者なんそーち、なー食み物ん少らはぬうりやみしぇーたんでぃ。うぬ場にあぬ、「なー、今日やなー火正月さーやー、ウスメー」でぃち、ただあんしめんしぇーるばーに。
ある人ぬ、一番ぉ隣ぬ金持ん人ぬ家からめんそーちゃーに、「私ねー、今日、一夜ぉなー泊まらさんなー」でぃ言みそーちゃぐとぅ。うぬ金持ん人ぬ家や、「物乞やー今から泊まらすんでぃちんあみ、如何なしん泊まらさん」でぃち、なー其処からー遣らさってーみしぇーるふーじーて。
あんさぐとぅ、またうぬ火正月ぬお婆さん達んかい、うぬ人ぉめんそーちぇーるふーじ。「私ねー泊まらち呉り」でぃちゃぐとぅ、「あーなー、あんやんな、私たーなー何ん食ぇ物りちん無びらんや、かんし火正月るえいびんどー」んでぃち。さぐとぅ、「あんしん良たさぐとぅ、泊まらち呉り」でぃち、なーあぬ、うぬ人ぉ其処んかい泊まいみそーちぇーるふーじーて。
あんさぐとぅ、うぬ人ぬ、「とーいったー、ぃやーやあんしぇー鍋ひきれー」でぃち、水入ってぃ鍋ひきたぐとぅ。あんさーにうぬ人ぬ米ぐゎー少ぃる入りみしぇーぬぐとーしがや、うぬお婆さんが煮みそーちゃぐとぅ、なー、なー鍋ぬいっぱいなてぃよ。あんさーに、うりさーに年ぇ取みそーちゃんでぃ、うぬお婆さん達や。
あんしさぐとぅ、また翌日ぁ、「とー若水りちて、水汲りっ来っうりしー」でぃち、うぬ人ぬ、あぬだー言みそーちゃーに。うぬ若水ぇ汲りっ来っ熱らち、翌日浴みそーちゃぐとぅや、なーお婆さん達ぁいっぺー若くなてぃめんしぇーんでぃよ、夫婦。
若くなてぃめんしぇーたぐとぅ、また隣ぬん、金持ん人ぬ主ん達んうり聞ちゃーに、「貴方なー何んち、あんし若くなてぃめんしぇーが」んち、「あんあんし、さぐとぅ、なー私達ぁ若くなとーんでー」んでぃ言みそーちゃぐとぅ。「あんしぇー、うぬ人ぉ何処んかい行みしぇーたが」でぃち。
あんさーに、またわざわざうぬ人頼りめんそー来に。また、元ぬ準備しみしぇーんて、若水ぇなーうりさーにさぐとぅ。うぬ人ん達やうぬ水し浴みたぐとぅ、なー全員、生物んかいなてぃよ。其処ぬ主女ぉ猿なてぃめーたんでぃ。また、鳥んかいないしん居い。若水さぐとぅ全員、なー銘々なー生物んかいなてぃ分くぃてぃ居らん。
あんさーにかい、あんし「うぬ家から、此処んかい移り」んち、うぬ人ぬ。なー御神やみしぇーてーるばーて。うぬ金持ん人ぬ家んかいうぬお婆さん達二人ぐー移みそーらちゃぐとぅ、なー毎日猿がきじーが来よ。
あんし、うぬまた人ぉ、御神ぇまた巡てぃめんそーち、「ちゃーやが」んでぃちゃぐとぅ。「なー、あぬ猿が毎日うりっし来ういし邪魔っしないびらんさー」んちゃぐとぅ、「ゑーあんやんなー」でぃやーに、「あんさーあぬだー山から、あぬ黒石取っ来にやー火んかい焼ちちきてぃ、うりがちゃー座ん所んかい置ちょーけー」んでぃ言みそーちゃぐとぅ。
あんさーに、あぬー、うぬ人ぉまた黒石焼ち、来る時分ねー其処んかい置ちぇーたぐとぅ。うりんかい尻掛きてぃ座ちゃぐとぅ、猿ぬ尻ぇ赤なとーんでぃぬ話。うりんうっさ。
昔、あるところに老夫婦が住んでいた。それは貧乏で、食べ物もろくに無かったそうだ。食べ物も無いので、「もう今日は、火に暖まって年越しをしようね、じいさん」と、大晦日の晩を過ごしていたようだ。
隣の金持ちの家では、ある人が訪ねてきて、「私を今夜一晩泊めてくれないか」と言った。「こんな時に乞食を泊めることができるか、絶対泊めることはできない」と、その人は金持ちの家から追い払われてしまった。
それで今度は、その貧乏な老夫婦の家へやって来た。「私を泊めてくれ」と言うと、「そうですか、うちは食べ物も何も無くて、こうして火にあたって年越しをしているのですが」と答えると、「それでもいいから、泊めてくれ」と、その人は泊まられたようだね。
そしたら、その人に、「さあ、鍋を火にかけなさい」と言われたので、鍋に水を入れて火にかけた。その鍋にその人が米を少し入れるようだったが、鍋にはいっぱいの御馳走が炊き上がってね。そうして、おばあさんたちは、その御馳走で年越しをしたそうだ。
そして、翌元日には、「さあ、年の初めの水を汲んで来なさい」と言われた。それで、水を汲んで来て沸かして浴びたところ、夫婦二人ともとても若くなった。
二人が若くなったということを、隣の金持ちが聞きつけて、「あなたたちはどうして、そんなに若くなったのか」と聞いた。「このようなことがあって、私たちは若くなったんだよ」と訳を話すと、「それで、その人はどこへ行かれたのか」と聞いて、その人を追って頼みこんだ。
それで、その人はわざわざやってきて、貧乏な夫婦にしたように水を準備させた。そうして金持ちの家の人達が浴びたら、もう皆、動物になってしまった。女主人は猿になったんだって。また鳥になってしまった者やいろいろな動物になって、金持ちの家の人は皆、散り散りになったという。
その人は、きっと神様だったんでしょうね。貧乏な夫婦に、「誰もいなくなった金持ちの家に移りなさい」と言って、金持ちが住んでいた家に、二人を住まわせた。そしたらもう、毎日猿が荒らしにやって来てね。
しばらくして、そこにまた、その人、神様がまわって来られ、「どう過ごしているかね」と聞いた。そこで、「毎日、あの猿がやって来て、邪魔をして困っています」と言うと、「ああそうか、それならば山から黒石を取って来て、その石を火で焼きつけて、その猿がいつも座る所に置くとよい」と言われた。
それで、夫婦は、黒石を焼きつけて、猿が来る時分にそこへ置いた。さっそく猿が現われ、その黒石に座り、尻を焼いた。それで猿の尻は赤くなったという話だよ。これでおしまい。