フユーな者ぬ働ちゃーなたんりる心てーさい、話。こんなこと有いびーたんよ。
まあ、下男二人居るばーてーさい。御奉公人ぬ二人居るばーてーさい。うぬ一人ぬ御奉公人ぉ大事な利口な者、フユーな者やるばーてーさい。一人やまた、じこー働ちゃーなたくとぅ、うりがくぬ働ちゃーんかい習しぎさんてーさい。
習しよーぬ、「ぃやーや何んならんさー」「何やが」んちゃくとぅ、「あぬだー、少なーや頭ぬ痛むんとぅか腹ぬ痛むんりち寝じーるんしぇー、あぬ米飯ん食むるむんぬ。ぃやー、いちぐ芋びけーん食り。ちゃーにーじゃ芋食り、あんしぇーあらんさーやー」んり。「あんし痛まん腹、痛むんり言んなー」り言ちゃくとぅ、「痛むんりねー誰がん分からんしぇー」りち言ちゃくとぅよーさい。「あんしぇー、あんるやん」「とー、私ぇ明日や起きーくとぅ、あんしぇー、ぃやー寝りよー。腹ぬ痛むんち寝りよー」んち、「あんし、本当なー、あんしぇー私が明日ぁ寝じゅくとぅ、あんしぇー、ぃやー出てぃ草刈てぃ来よやー」んちゃくとぅ、「うん」ち、うぬフユーな者ぉ、草刈いが行ぢぇーんてーさい。
あんさくとぅ、うぬ主人ぬ女ん子ぬ、雨ぬ降いたくとぅ、其処んじかんし立っちょーてーるばーてー。うぬ雨垂いぐゎーんかい。アサギぐゎーぬ下んかい、立っちょーてぃさくとぅ、「異風な話すっさー」んち聞ちゃーに、うり親んかい言ちぇーるばーでぎさんでーさい。
あんとぅ主人ぉ、うぬ女ん子から聞ちゃーに、「とあんしぇー、ぃやー良いむん聞ちぇーさ、くれーなー、かんしさんあれー、此達がーなー治らん。ちゃーフユーすんりやーに」直ぐヤブーぬ家んかい行ぢ。
あんしちゃくとぅ、其処んかい行ぢゃーに、「私たーうぬ異風な事、私たー使とーる童達やっさー」んち。「何が何やが」んちゃくとぅ。「はー、ぃやーや。『痛まんてぃん腹ぬ痛むんち、ぃやー寝とーきよーや。私ぁ草ぁ刈てぃ来くとぅ』んりやーに。今日や、うぬ大変良ぅ働ちゅぬ童があんまさんち寝とーさー」んり。「あんやんなー」り。「うり、ちゃーしん治ち呉らんあいねーなー大事でー」り言ちさくとぅよーさい。あんさーい、ヤブーや、なー来に。
「ぃやー何が何処ぬ痛むが」「腹ぬ痛むんさい」んちて。あんさに、手や掴みらってぃ、「んちゃ、くれー腹熱」んち、「ぃやー腹熱出とーっさー」んり。「くれーヤブーぬ家んじ、ヤブー頼り来んあれーならんでー」りち、「とー、アンマー早くなーヤブー頼り来わ、なー大事やさなー」りち。あんさーいさぐとぅ、だーあれーなー、あんまさんち寝とーし、直ぐ起きてぃ逃ぎる訳ぇならんしぇーやー。
あんさい、ヤブーや来に手や掴みやーに、「はっさびよー、くれーじこー熱れむん。なーくれーヤーチューんしっ、鍼ん立てぃらんあれーならんれー」りちよーさい。また直ぐ鍼ん立てぃいなー、ちゃふぃんなーフーチん置ちきてぃ。なーわちゃくどぅやくとぅよーさい。わざっとぅ治すんちどぅやくとぅ、ちゃっぴなーヤーチューしぇーぎさんてーさい、皆掴みてぃ。「アキサミヨーなーな、今からなーけー治とーくとぅなー、今から寝じゃびらんどー」し叫びーたんりよーさい。
あんさーに、「ぃやー為なか、私ねー大事なたるむん。ぃやーかい習し破らりやーに、だー、胴いっぺー全部鍼ん立てぃらってぃヤーチューんさったしぇー」り言やびーたんりよ。
また、うぬフユーな者ぉ「なー一大事、なー寝じんでしーねー、うんぐとぅし焼かりーしぇー」んりやーによーたい。あんさい、二人働ちゃーなてぃなー、大事んりやーに。大事な働ちゃーなたんりしがよーさい。二人ぐーに、なー成功者なたんりぬ話ぬ有えさびたんどー。
フユー(不精)な者が改心して働き者になったという話ね。こんなことがありましたよ。
まあ、ある家に下男が二人いてね。奉公人が二人いるわけです。その一人の奉公人は大変小利口な怠け者であったわけです。もう一人はとても働き者であったので、このフユーな者がその働き者に教えたようだね。
フユーな者が、「お前はどうしようもないなあ」と言うと、働き者が「どういうことか」と聞いた。「たまには頭が痛いとかお腹が痛いと言って休んだら、ご飯も食べられるのに。お前はいつも不味い芋だけ食べているじゃないか」ということだった。「だって痛くもない腹を痛いと言えるのか」と言うと、フユーな者は「人の痛みは誰も分からないよ」と言ったわけだよ。「そうか、それもそうだな」「そうさ、さあ、明日は私が仕事に出るから、今度は、お前は腹が痛いと言って休みなさいね」と。「本当にそれでいいのか、それじゃあ私は明日休むので、お前が草刈りをしてきてくれよ」と働き者が言って、「ああ」と、そのフユーな者が草刈りに行ったようだ。
そんな話をしている時に、その家の娘が二人のいるアサギ(離れ)の軒下で、雨宿りをしていたわけさ。二人のそういう話を耳にして、「妙な話をしているなあ」と、それを親に話したわけだ。
「そうか、お前は良いことを聞いたね」と、娘からそれを聞いた主人は、「下男たちはいつも怠けることを考えているんだな。これはなんとかしないといけない」とヤブー(鍼灸師)の家へ相談に行った。
それで、ヤブーに、「うちの下男たちが変なことを考えているようだが」と話し、「どういうことか」「ああもう聞いてくれよ。下男たちが、『今日は私が草を刈ってくるから、お前は腹が痛いといって休んでおけよ』と企んだようで、いつも真面目に働いている下男が、具合が悪いと言って、今日は寝ているんだ」と。「そういうことか」「これを、なんとか治してくれないか」と前もって相談したわけだ。それでヤブーが主人の家に来ることになったようだね。
主人が下男に「お前はどこが痛いのか」と聞くと、下男は「お腹が痛いです」と答えた。主人は、その手を掴んで「あら、これはお腹の熱、お前はお腹に熱があるよ」と言い、「これはもう大変だ。アンマー、早くヤブーを呼んできてくれ」と、妻に言った。そしたらもう、下男は具合が悪いと言って寝ているのだから、直ぐに起きて逃げることもできなくなってね。
そこにヤブーがやって来て、下男の手を掴んで、「ああ大変!これはすごい熱だ。これはもうお灸をして鍼も立てないといけない」と言ってね。わざと鍼を立てて、また大きな艾を置いてね。皆で下男を押さえて大きなお灸をしたようだね。「アキサミヨーなーな!もう治りましたから、これからはもう休みませんよ」と叫んだって。
それで、「お前のせいで、私はひどい目にあった。お前に変なことを吹き込まれて、見ろ、身体中に鍼を立てられてお灸までさせられたんだぞ」と、フユーな者に言ったそうだ。
そしたら、そのフユーな者も「もう大変、仮病を使ったりしたら、あのようにお灸をされて大変だ」と言ってね。お灸をさせられた下男と二人、一生懸命に働いてね、二人とも成功したという話がありましたよ。