読谷村しまくとぅば「むんがたい」

都屋徳武佐 とぅやとぅくぶさー

話者 阿波根直孝(1897・M30) 地域 都屋 時間 01:16
  • しまくとぅば
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 都屋(とぅやー)(とぅく)武佐(ぶさー)んでぃしぇー、今帰仁(なちじん)(ぐしく)今帰仁(なちじん)親方(いぇーかた)んりがらーぬ(くゎ)(ぅんまが)やみしぇーたんでぃ。あんさーなかい、うぬばーに、(ぬち)(うしな)いるばーに、此処(くま)んかいめんそーち、夫婦(みーとぅんだ)とぅ(くゎ)(ちゃー)とぅ()っ。あんし其処(ぅんま)をぅてぃ(しぬ)(ぬち)(たし)かてぃ。


 「あーなー(ぬち)(たし)かてぃやー、此処(くま)都屋(とぅやー)(とぅく)武佐(ぶさー)んでぃち()きりやー」んでぃ、(とぅく)ぬいぎたーが()ぐとぅ、何時(いち)何時(いち)までぃん此処(くま)んかいや(とぅく)()り。


 あんししっから、今帰仁(なちじん)から何処(まー)んくい(うが)どーんや、都屋(とぅやー)(とぅく)武佐(ぶさー)んち、(とぅく)()んでぃち。うん、今帰仁(なちじん)からん(ちゅー)んどー。(あぬー、(ふーに)()いびーたさにやー)うん、(ふーに)()たんでぃしが、私達(わったー)がーうれー()からんさー。(()じみそーらん?)、んーんんー()らん。


 あんししっから、くぬ戦争(せんそう)にうっさぬ都屋(とぅやー)ぬしんか、うぬ洞穴(がま)んかい()っち、うりから(いー)から爆弾(ばくだぬ)(ぬー)()とぅすしが、うぬ(ごう)んかいむる()らん、()てぃらん、(てぃー)ちん()てぃらん。あんし、都屋(とぅやー)ぬしんかー終戦後(しゅうせんご)なてぃからいっぺー其処(んま)(しん)じてぃ、(たし)かてぃ。

 都屋徳武佐はね。今帰仁から戦に追われた今帰仁親方の一族がここに逃れてきたらしい。そして、その洞穴に隠れて命を凌いだそうだ。



 それで、「もう命が助かった、ここは徳があるから都屋徳武佐と呼ぶことにしよう」と、名が付いたんだって。いつまでも徳がありますようにということでね。


 それからは、今帰仁など他所からも、都屋徳武佐を拝みに来るよ、徳があるということでね。うん、今帰仁からも拝みに来るよ。(あのう、骨もあったでしょうね)遺骨もあったそうだが、私らはそのことは分からないな。(見たことはない?)、いや見なかった。


 去る大戦には、都屋の多くの人たちがその洞穴に避難した。上空からは爆弾も落とされたが、そこには一個も落ちなかった。それで、都屋の人たちは、戦後もなお一層、都屋徳武佐を崇拝しているんだよ、命が助かったということでね。

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解説

都屋の地形は、集落東側では、沖縄戦により、また戦後のコーラル採掘により、海側では港湾工事によって破壊消失し、大きく変化している。 かつて集落東側には、座喜味や波平へ続くトゥヤーバンタの道やセーラの小高い丘に緑鮮やかな松林が連なり、丘の高みからは眼下に海辺まで続く斜面、都屋の集落と美しい砂浜、海の向こうには慶良間諸島や、粟国、渡名喜の島々を望む風光明媚な地であった。現在は、跡形も無いセーラの丘は、第4紀サンゴ石灰岩(F・スターンズ・マクネイルは、琉球石灰岩を下位より那覇石灰岩、読谷石灰岩、牧港石灰岩と分類。都屋の地域は読谷石灰岩の代表的地帯)で形成され、この水はけの良い読谷石灰岩の露頭と、やはり保水力のあまり良くない島尻マージと呼ばれる赤褐色土の混在が見られる。 こうした地形・地質のため、かつては上地や楚辺から飲料水を運んで利用していた。明治40年代、集落南東の窪地デークロー付近で井戸を掘ったところ水が湧き出て住民は大喜びしたと伝えられている。その後30か所余の井戸が掘られた。概して深井戸で、水脈は地底深くに通っていることがわかる。今日でもウリーバーマグヮーやジャングムイ(ジャーグムイ)の海底からは水が湧き出しているが、その他にも都屋地先の海底には数か所、水が湧いており、これは都屋集落の地下深くを、水脈がいくつも通っていることを示している。 こうした地下水脈の豊かさから、地下鍾乳洞が存在し、陥没ドリーネ(鍾乳洞の天井が崩落したところ)ができている。ティラヌガマ、またはティラヌ壕と呼ばれている。全長約70メートルのくの字型をした洞窟である。洞内に流水は認められないが、洞中央部より海側に水溜まりがあり、洞床は海水面まで至っていると思われる。 このガマから、面縄前庭式土器(縄文時代後期相当期)と考えられる土器片や、石斧1点、その他シャコ貝、二枚貝、古い人骨と思われるものの散布が報告されているが、詳細はわかっておらず、本格的調査が待たれる。都屋の海岸にも、数千年前に既に人が住み、目の前のイノー(礁池)の恵みを生活に活かしていたことを思わせる。(「都屋ガイドマップ」都屋の地形・地質・考古)

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